インスリン複数回/日治療中の血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者に対し、GLP-1製剤リラグルチド(商品名:ビクトーザ)を併用することで、低血糖リスクを増大することなく血糖コントロールを改善し、体重減少およびインスリン投与量を減らせることが報告された。スウェーデン・イエーテボリ大学のMarcus Lind氏らが、124例対象の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い明らかにした。2型糖尿病患者へのインクレチンベースの製剤の有効性は、経口糖尿病薬または基礎インスリンのみ服用の早期ステージ患者については示されているが、インスリン複数回/日投与を必要とする患者については不明であった。BMJ誌オンライン版2015年10月28日号の掲載報告。
124例を登録し無作為化二重盲検プラセボ対照試験
試験は、スウェーデン国内の13病院と1プライマリケア・ユニットで行われた。
被験者は、2型糖尿病で血糖コントロールが不十分(HbA1c値7.5%~11.5%)、BMI値27.5~45、インスリン複数回/日投与を必要とする患者を適格とし包含。最小化割り付けにて、リラグルチド皮下注群またはプラセボ群に割り付け、6、12、18、24週時点でフォローアップ評価を行った。
主要評価項目は、ベースラインから24週までのHbA1c値の低下であった。
2013年2月~14年2月に被験者登録を行い、試験は同年8月に完了。総計124例が無作為化を受け、少なくとも1回のフォローアップ評価を受けた122例を全解析に組み込み、主要有効性解析を行った。
低血糖リスクを増大せず血糖コントロール改善、体重やインスリン投与量も減少
全解析コホートのベースラインでの両群特性は類似していた。HbA1c値はリラグルチド群8.98%(74.6mmol/mol)、プラセボ群8.96%(74.4mmol/mol)で、年齢(63.8、63.6歳)、性別(男性63.5、66.1%)、BMI値(33.7、33.5)、インスリン投与量/日(105.3、105.6単位)、接種回数/日(4.5、4.4回)、罹病期間(17.3、17.0年)などであった。
結果、24週時点までのHbA1c値低下は、リラグルチド群1.55%、プラセボ群は0.42%で、前者の有意な低下が認められた(p<0.001)。両群差は-1.13%(95%信頼区間[CI]:-1.45~-0.81)であった。
また、体重がリラグルチド群で有意に低下し(3.8 vs.0.0kg、両群差:-3.8、95%CI:-4.9~-2.8)、インスリン投与量/日も有意に低下した(18.1 vs.2.3単位、両群差:-15.8、95%CI:-23.1~-8.5)。
盲検下での血糖値連続モニタリングの結果もリラグルチド群で有意な低下が認められた(平均値:-1.9mmol/L、SD値:-0.5mmol/L)。
重症低血糖例や、症候性または無症候性の非重症低血糖(<4.0または<3.0mmol/L)エピソードについて、いずれも両群間で有意な差はみられなかった。フォローアップ中の症候性非重症低血糖(<4.0mmol/L)エピソードは、リラグルチド群1.29例、プラセボ群1.24例であった(p=0.96)。
また、悪心がリラグルチド群で21例(32.8%)報告された。プラセボ群は5例(7.8%)であった。なお、重篤な有害事象の報告はそれぞれ3例(5%)、4例(7%)であった。
試験は相対的に短期間であり限界があったが、著者は、「リラグルチドの持続的な効果は、他の治療レジメンとの関連で長期にわたることが見て取れた」と述べている。一方で「リラグルチドの長期曝露による心血管系の安全性および潜在的有害事象についての評価が必要である」と指摘している。