高齢視覚障害者のうつ、段階的ケアの長期効果を確認/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/10

 

 うつ病や不安症がみられる高齢視覚障害者への、経過観察→ロービジョン施設セラピストによる自立支援指導等介入→かかりつけ医による治療という段階的ケアの長期有効性が、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHilde P A van der Aa氏らによる、通常ケアと比較した多施設無作為化試験の結果、報告された。段階的ケアについては先行研究で、高齢視覚障害者のうつ症状を短期的に軽減することは示されていたが、長期的な効果について、また不安症に対するエビデンスは不足していた。今回の検討では約1年間にわたる介入を必要に応じて行い、2年時点で評価した結果だという。著者は、「本アプローチは、うつ病や不安症がみられる高齢視覚障害者の標準的な戦略(スクリーニング、モニタリング、介入、紹介)となりうるだろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年11月23日号掲載の報告。

4ステップ介入 vs.通常ケアのみの多施設無作為化試験
 研究グループは、高齢視覚障害者(主に年齢関連の疾患による)に対し、通常ケアとの比較で段階的ケアが大うつ病性障害、気分変調症、不安障害の発症予防に有効か、またうつ病や不安症の改善に有効かを調べた。

 50歳以上の265例を、段階的ケアプログラム+通常ケア群(131例)または通常ケアのみ群(134例)に無作為に割り付けた。

 段階的ケアプログラムは4ステップから成り、第1ステップは研究者による経過観察期間(3ヵ月間)としベースラインと3ヵ月後に電話で約15分コンタクト、第2ステップはロービジョンリハビリテーションセンターの作業療法士(OT)による認知行動療法をベースとしたガイド下自立支援の提供(3ヵ月)、第3ステップは同センターのソーシャルワーカー(SW)、臨床心理士(psychologist)による問題解決療法の実施(3ヵ月)、第4ステップは、問題解決療法後もうつ病や不安症増大が認められる場合に、研究者が電話で患者とかかりつけ医を結び付ける介入を行った(患者に、かかりつけ医に紹介することを電話で連絡し、一方でかかりつけ医にさらなる治療や薬物療法の使用を検討するため患者と面談するよう電話で連絡。それぞれ電話は約15分間)。

 主要アウトカムは、大うつ病性障害、気分変調症、および/または不安障害(パニック障害、広場恐怖症、社交不安症、全般性不安障害)の24ヵ月間の累積発生率。副次評価項目は、うつ症状、不安症、視覚関連QOL、健康関連QOL、視力喪失への適応の24ヵ月間の変化とした。

うつ病等障害の24ヵ月累積発生率、介入群の相対リスク0.63
 24ヵ月間の各障害累積発生率は、通常ケア群では62例(46%)に対し、段階的ケア群は38例(29%)であった。

 介入は障害累積発生の減少と有意に関連しており(相対リスク:0.63、95%信頼区間[CI]:0.45~0.87、p=0.01)、イベントが発生するまでの時間(time to event)を考慮しても同関連は有意なままであった(補正後ハザード比:0.57、95%CI:0.35~0.93、p=0.02)。治療必要数(NNT)は、5.8(3.5~17.3)であった。

 なお、検討では途中脱落率がかなり高かった(34.3%)が、2群間の割合に有意な差はなく、ステップ介入が通常ケアと変わらないものと受け入れられていることが示唆された。

 一方で本試験では、レスポンダーが非レスポンダーよりも有意に若年であったことから(年齢差4.6歳、p<0.001)、著者は、「被験者はボランティアで本研究への参加を希望したが、一般的な高齢視覚障害者の代表とはいえない可能性がある」と指摘し、アウトカムの一般化についてはその点を差し引いて見なすべきとしている。