北欧の双生児を長期に追跡した研究で、すべてのがんおよび特異的がん(前立腺、メラノーマ、乳がん、卵巣、子宮がんなど)において、過剰な家族性リスクが有意に認められることを、米国・ハーバード公衆衛生大学院のLorelei A. Mucci氏らが報告した。住民集団ベースの研究で、家族性がんリスクは、がんリスク予測の基本要素とされている。著者は、「がんの遺伝性リスクに関する本情報は、患者教育やがんリスクカウンセリングに役立つだろう」とまとめている。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。
北欧4ヵ国20万3,691例を32年間追跡
研究グループは、大規模双生児コホートで、がんの家族性および遺伝性リスクを調べるため、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの住民ベースレジスターから、双生児20万3,691例(一卵性8万309例、同性の二卵性12万3,382例)を集め前向きに追跡した。
追跡期間は1943~2010年、中央値32年間で、全死因死亡は5万990例であった。追跡不能は3,804例。
双生児が共有した環境リスク因子、遺伝性リスク因子を調べ、がん発症について評価した。また、時間イベント解析を行い、家族性リスク(双子におけるがん発症リスク)、遺伝性リスク(個人レベルの遺伝子の違いによるがん発症リスク)を調査。年齢、追跡期間を補正した統計モデルを用い、死亡リスクの比較検証を行った。
一卵性のほうが二卵性よりもリスクが高い
全体で2万3,980例、2万7,156件のがんが診断された。累積発症率は32%であった。
双子ともにがんと診断されたのは、一卵性(2,766例)は1,383組、二卵性(2,866例)は1,933組。同種がんの発症率は、一卵性38%、二卵性26%であった。
コホート全体の累積発症リスク(32%)と比較して、双生児の一方ががんを発症した場合の残る一方のがん過剰絶対リスクは、二卵性で5%(95%信頼区間[CI]:4~6%)高く(発症率は37%、95%CI:36~38%)、一卵性では14%(同:12~16%)高かった(同:46%、44~48%)。大半のがんで、家族性リスクおよび累積発症リスクが、二卵性よりも一卵性で有意に高かった。
全がん発症の遺伝性リスクは33%(95%CI:30~37%)であった。個別にみると、メラノーマ皮膚がん(58%、95%CI:43~73%)、前立腺がん(57%、51~63%)、非メラノーマ皮膚がん(43%、26~59%)、卵巣がん(39%、23~55%)、腎臓がん(38%、21~55%)、乳がん(31%、11~51%)、子宮がん(27%、11~43%)であった。