非糖尿病の肥満妊婦にメトホルミンは有用?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/15

 

 BMI35超で非糖尿病の妊婦に対する周産期におけるメトホルミン投与は、新生児の出生体重を減少せず、一方で母親の妊娠中の体重増を抑制し、妊娠高血圧腎症罹患率は低下した。英国・キングス・カレッジ病院のArgyro Syngelaki氏らが、450例の妊婦を対象に行った試験の結果、示された。肥満は有害妊娠アウトカムのリスク増大との関連が知られている。しかし、これまでに行われた生活習慣介入試験では、転帰の改善は認められていない。メトホルミンは、妊娠糖尿病を有する妊婦への投与で、非投与の妊婦と比べて体重増加量が少なかったことが報告されていた。NEJM誌2016年2月4日号掲載の報告。

妊娠12~18週から出産まで、メトホルミン投与
 研究グループは、BMIが35超で非糖尿病の妊婦を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。BMIは、試験開始時の妊娠12~18週に測定した。

 被験者を無作為に2群に分け、一方にはメトホルミン(3.0g/日)を、もう一方の群にはプラセボを、妊娠12~18週から出産までの間それぞれ投与した。

 主要評価項目は、新生児出生体重Zスコア中央値の0.3標準偏差(SD)減少とした。この減少幅は、在胎期間に比べ不当に過大な新生児出産のリスクを20%から10%へと半減する指標に該当する。

 副次評価項目は、母親の妊娠中の体重増加量、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症、新生児の有害アウトカムだった。

妊娠高血圧腎症リスクは4分の1に減少
 試験期間中に被験者のうち50例が参加の同意を取り下げたため、解析に組み込まれた被験者はメトホルミン群202例、プラセボ群198例であった。
 新生児出生体重のZスコア中央値は、メトホルミン群0.05(四分位範囲:-0.71~0.92)、プラセボ群が0.17(同:-0.62~0.89)で、両群間に有意な差はみられなかった(p=0.66)。

 一方、母親の妊娠中体重増加量の中央値は、プラセボ群6.3kg(同:2.9~9.2)に対し、メトホルミン群は4.6kg(同:1.3~7.2)と有意に少なかった(p<0.001)。また、妊娠高血圧腎症の罹患率も、それぞれ11.3%、3.0%とメトホルミン群で有意に低率だった(オッズ比:0.24、95%信頼区間:0.10~0.61、p=0.001)。

 妊娠糖尿病(プラセボ群11.3%、メトホルミン群12.4%、p=0.74)、在胎期間に比べた不当過大新生児(15.4%、16.8%、p=0.79)、および新生児の有害アウトカムの発生率は、両群間で有意な差はなかった。

 重篤有害事象の頻度は両群間で有意差はなかったが、副作用の頻度は、メトホルミン群のほうが高かった。そのため、17.6%が服用を中止、41.8%が用量を減量した。当初の用量を継続したのは40.6%。ただしこれらの決定に関して群間の有意差はなかった。なお、7例(うち5例はプラセボ群)で胎児の発育遅延がみられ試験を中断している。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長

J-CLEAR評議員