ブラジルで妊娠初期にジカウイルスに感染したと考えられる25歳の欧州女性が、妊娠32週で人工中絶。その胎児解剖の結果、小頭症が認められ、脳内からはジカウイルスが検出された。スロベニア共和国・リュブリャナ大学のJernej Mlakar氏らによる症例報告で、NEJM誌オンライン版2016年2月10日号で発表した。中南米とカリブ地域では2015年、ジカウイルス感染症の流行が報告され、同ウイルスに感染した母親から生まれた新生児の小頭症が増加していることが重大な懸念として持ち上がっている。
妊娠13週でジカウイルス感染疑い
報告によると欧州出身のこの女性は、2013年12月からブラジル北東部のナタールに住んでおり、15年2月に妊娠した。その後妊娠13週で高熱を出し、重度筋骨格・球後痛とかゆみを伴う全身性斑点状丘疹を呈した。同地域ではジカウイルス感染症が流行していたため、妊婦についても感染が疑われたものの、ウイルス診断テストは実施しなかったという。
その後、妊娠14週と20週の超音波検査では、胎児に解剖学的な異常や成長の遅れはみられなかった。
妊娠29週で胎児奇形、32週で小頭症
この女性は妊娠28週で欧州に帰国。妊娠29週で超音波検査を受けたところ、胎児奇形が認められ、同大学病院に紹介された。その時点でこの女性は、胎児の動きが少なくなったことを感じていたという。
妊娠32週の超音波検査では、子宮内胎児発育遅延が確認された。胎盤の厚さは3.5cmと正常値だったものの、複数箇所に石灰化が認められた。また胎児の頭囲が、妊娠周期に対して2パーセンタイル未満であり、小頭症が確認された。
妊娠32週時点で人工中絶が行われ、その3日後に胎児と胎盤の解剖を実施した。
その結果、胎児の脳の小頭症が観察され、ほぼ完全な無脳回症と水頭症、および大脳皮質と皮質下白質に多病巣性異栄養性石灰化が認められ、また皮質の偏位と軽度病巣性炎がみられた。さらに胎児の脳の組織片からは、RT-PCR法によりジカウイルスを検出した。電子顕微鏡下でも確認し、ジカウイルスの完全ゲノムも得られた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)