遺伝的にBMIや血糖値が高い母親の子供は出生時体重が重く、これらの関連には因果関係がある可能性が、英国・エクセター大学医療センターのJessica Tyrrell氏らEarly Growth Genetics(EGG)Consortiumの検討で示唆された。研究の成果は、JAMA誌2016年3月15日号に掲載された。過体重で出生した新生児や肥満女性は出産時の合併症のリスクが高いとされる。観察研究では、母親の肥満関連の遺伝形質が出生時体重と関連することが報告されているが、その因果関係はよく知られていないという。
約3万組の母子をメンデル無作為化解析で評価
研究グループは、母親のBMIや肥満関連の遺伝形質と子供の出生時体重との因果関係のエビデンスを検証するための検討を行った。
欧州、北米、オーストラリアで実施された人口ベースまたは地域ベースの18試験に参加した欧州系の女性と、EGG Consortiumに参加した女性の合計3万487人のデータを、メンデル無作為化法を用いて解析した。1929~2013年に、単胎の正期産の生児として出生した子供を解析の対象とした。
BMI、空腹時血糖、2型糖尿病、収縮期血圧(SBP)などの遺伝スコアの評価を行った。
3万487人の新生児の各コホートの平均体重は3,325~3,679gであった。母親の妊娠前の平均BMIは22.78~24.83であり、出産時の平均年齢は24.5~31.5歳だった。
母親のSBPの遺伝スコアが高い場合は、出生時体重が軽い
母親のBMIの遺伝スコアは、母親のBMI亢進アレル(BMI-raising allele)による子供の出生時体重の2g(95%信頼区間[CI]:0~3)の増加と関連が認められた(p=0.008)。
また、母親の空腹時血糖の遺伝スコアも血糖亢進アレルによる出生時体重の8g(95%CI:6~10)の増加と関連した(p=7×10
-14)のに対し、母親のSBPの遺伝スコアはSBP亢進アレルによる出生時体重の4g(同:-6~-2)の減少と関連がみられた(p=1×10
-5)。
一方、母親のBMIの遺伝スコアが1 SD(=4ポイント)上昇すると、子供の出生時体重が55g(95%CI:17~93)増加した。また、母親の空腹時血糖が1 SD(=7.2mg/dL)上昇した場合、出生時体重は114g(同:80~147)増加した。これに対し、SBPの1 SD(=10mmHg)の上昇により、出生時体重は208g(同:-394~-21)減少した。
BMIと空腹時血糖は、その遺伝的関連が観察的関連と一致していたが、SBPの遺伝的関連は観察的関連とは逆であった。
著者は、「他の試験で再現されれば、これらの知見は妊婦のカウンセリングや妊娠管理において、体重関連の有害な出生アウトカムの回避に有用となる可能性がある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)