毎日の適度な身体活動(1日約60~75分)は、長時間座位と関連する死亡リスクを排除すると思われることが、英国・ケンブリッジ大学のUlf Ekelund氏らによる男女100万人超のデータをメタ解析した結果、明らかにされた。一方で、同活動はTV視聴時間と関連する死亡リスクについては、低減はするが排除するまでには至らなかった。長時間座位は多くの慢性症状や死亡との関連が示唆されている一方、身体活動が長時間座位による有害作用を減少もしくは排除にまで至るのかは不明であった。著者は、「検討の結果は、とくに長時間座位労働者が増えており、今後パブリックヘルスの推奨が行われていく社会において、身体活動のベネフィットについてさらなるエビデンスを提供するものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月27日号掲載の報告。
長時間座位、身体活動度と全死因死亡との関連をメタ解析
研究グループは、長時間座位および身体活動度と、全死因死亡との関連を調べる調和メタ解析を行った。6つのデータベース(PubMed、PsycINFO、Embase、Web of Science、Sport Discus、Scopus)を刊行開始~2015年10月にかけて検索し、システマティックレビューで前向きコホート研究を選定した。具体的には、個人レベルの曝露とアウトカムデータ、日々の座位時間またはTV視聴時間、および身体活動に関するデータ、全死因死亡、心血管疾患死、または乳がんと大腸がんの死亡について報告しているものとした。
検索により16試験(システマティックレビューによる14試験、未発表試験だがデータを入手できた2試験)を包含。すべてのデータを調和プロトコル――1日の座位時間で4分類(<4、4~<6、6~8、>8時間/日)、1日のTV視聴時間で4分類(<1、1~2、3~4、≧5時間/日)、また身体活動度(MET時間/週)で4分位に分類(最高分位:>35.5、第3分位:30、第2分位:16、最低分位:<2.5MET時間/週)した。その後、すべての試験データを統合し、座位時間および身体活動度と全死因死亡の関連を解析し、Cox比例ハザードモデルを用いた要約ハザード比を推算した。同様に、座位時間をTV視聴時間に置き換えた評価も行った。
身体活動度が高ければ、座位時間が長時間でも死亡リスクを抑制
16試験のうち座位時間と全死因死亡のデータが得られたのは13試験で、包含データは100万5,791例、追跡期間は2~18.1年だった。同期間中の死亡は8万4,609例(8.4%)だった。
参照群(座位時間:<4時間/日、身体活動度:最高分位の>35.5MET時間/週)との比較において、死亡率は身体活動度の第2分位群と最低分位群で高くなることが認められた。ハザード比(HR)でみると、「第2分位の最短<4時間/日」群1.12(95%信頼区間[CI]:1.08~1.16)~「最低分位の最長>8時間/日」群1.59(同:1.52~1.66)にわたっていた。
身体活動度が高ければ、座位時間/日と全死因死亡との関連はみられず、最高分位内では最も座位時間の長い>8時間/日群のHRも1.04(95%CI:0.99~1.10)だった。しかし、身体活動度が低くなるほどその関連性は強まり、最低分位内では、座位時間の最も短い<4時間/日群と比較した最も長い>8時間/日群のHRは1.27(同:1.22~1.31)と顕著なリスク増大がみられた。
TV視聴時間に関するデータは6試験で得られた(46万5,450例、死亡4万3,740例)。
結果、座位時間身体活動度の最高分位を除けば、視聴時間3時間以上で顕著な死亡増大がみられた。身体活動度最高分位でも、視聴時間5時間以上群になると死亡の増大がみられ、HRは1.16(95%CI:1.05~1.28)と顕著であった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)