無作為に抽出した高齢者において、看護師主導による心血管リスク因子に焦点を絞った多面的な介入は、認知症発症率の減少には至らなかった。オランダ・Academic Medical CenterのEric P Moll van Charante氏らが、The Prevention of Dementia by Intensive Vascular care trial(preDIVA試験)の結果、報告した。先行研究では、心血管リスク因子の改善が認知症を予防する可能性が示唆されていた。今回の研究で介入の効果を確認できなかった理由について著者は、「ベースライン時、すでに軽度の心血管リスクを有し、プライマリケアで高い水準のリスク管理が行われていたことによる」と考察したうえで、未治療の高血圧患者においては介入により臨床的に意味のある効果が得られていることから、「今後は選択された集団で介入の有効性を評価すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月26日号掲載の報告。
高齢者約3,500例を6年追跡し、多面的介入と通常ケアの認知症発症率等を比較
preDIVA試験は、オランダにて、26の医療センタービルにある116の一般診療所(家庭医)を拠点に実施された、多施設共同非盲検クラスター無作為化比較対照試験であった。
研究グループは、研究参加者として70~78歳の高齢者を募集し、2006年6月7日~2009年3月12日に、適格基準を満たし研究への同意が得られた3,526例を、看護師主導の多面的な心血管系への介入を6年間行う群(介入群)と通常ケアを行う群(対照群)の2群に診療所単位で無作為化した(介入群:63施設1,890例、対照群:53施設1,636例)。
介入群には、6年間にわたって4ヵ月に1回計18回一般診療所を受診してもらい、看護師が心血管リスク因子(喫煙習慣、食事、運動、体重、血圧)の評価と、動機づけ面接法による生活習慣の指導や支援を行った。
主要評価項目は、6年時の累積認知症発症率および障害スコア(Academic Medical Center Linear Disability Score:ALDS)。副次的評価項目は、心血管疾患の発症率および死亡率などであった。評価者盲検とし、アウトカムデータを入手し得たすべての参加者を解析に組み込んだ。
認知症発症率や障害スコアに両群間で有意差なし
主要評価項目の解析対象は3,454例(98%)で、平均追跡期間は6.7年(2万1,341人年)であった。介入群では1,853例中121例(7%)、対照群では1,601例中112例(7%)が認知症を発症した(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.71~1.19、p=0.54)。追跡期間中に測定された平均ALDSスコアは、両群間で差は認められなかった(介入群85.7[SD 6.8]、対照群85.7[7.1]、補正平均差:-0.02、95%CI:-0.38~0.42、p=0.93)。
副次的評価項目については、死亡率は対照群16%(269/1,634例)に対し介入群は16%(309/1,885例)であり、両群間に差はなかった(HR:0.98、95%CI:0.80~1.18、p=0.81)。心血管疾患発症率も同様にそれぞれ17%(228/1,307例)および19%(273/1,469例)で差は認められなかった(HR:1.06、95%CI:0.86~1.31、p=0.57)。
サブグループ解析の結果、アドヒアランスが良好であった未治療の高血圧症を有する高齢者の場合、認知症発症率は介入群4%(22/512例)に対し対照群は7%(35/471例)であった(HR:0.54、95% CI:0.32~0.92、p=0.02)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)