血圧の長期的変動(診察室血圧測定による)は心血管および死亡のアウトカムと関連し、平均血圧の効果を上回るものであることが、英国・オックスフォード大学のSarah L Stevens氏らによる、システマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにされた。中期的(家庭血圧)、短期的(24時間ABPM)変動も同様の関連が示されたという。これまでに血圧高値の患者は、将来的な心血管疾患リスクが高いことは確立されている。また、血圧変動が大きい患者は、平均血圧値が保たれている患者と比べてリスクが高いことも示唆されていたが、血圧変動の測定の違いによるリスクについては不明であり、平均血圧または治療による変化に正しく触れた検討はほとんどなかったという。BMJ誌オンライン版2016年8月9日号掲載の報告。
血圧測定法の違いを考慮し、アウトカムとの関連をメタ解析
研究グループは、システマティックレビューにより、血圧の長期的(診察室で測定)、中期的(家庭で測定)、短期的(24時間ABPM)な変動を、平均血圧と独立して、心血管疾患イベントおよび死亡との関連を定量化する検討を行った。
Medline、Embase、Cinahl、Web of Scienceを2016年2月15日時点で検索。英語のフルテキスト論文で、成人を対象とした前向きコホート試験または臨床試験を適格とした。血液透析を受けている患者、また血圧変動に直接的な影響を及ぼす可能性がある状態の患者を含むものは除外した。
交絡リスクが少ないものについて標準化ハザード比を抽出し、ランダム効果メタ解析法を用いて主要解析に統合した。アウトカムには、全死因死亡、心血管死、心血管疾患イベントを含んだ。変動については、標準偏差、変異係数、平均から独立したばらつき、真の平均変動などを測定し、夜間ディッピングや日中-夜間変動は測定しなかった。
変動増大とリスク増大との関連を確認
41論文を選定し、観察コホート研究19件、臨床試験コホート17件、解析46件のデータを特定した。
血圧の長期的変動の検討は24論文で、中期的変動は4論文、短期的変動は15論文(2論文は長期と短期の両者を検討していた)で行った。解析のうち23件は、交絡リスクが高く主要解析から除外した。
結果、収縮期血圧値の長期的変動の増大は、全死因死亡(ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.09~1.22)、心血管疾患死(1.18、1.09~1.28)、心血管疾患イベント(1.18、1.07~1.30)、冠動脈疾患(1.10、1.04~1.16)、脳卒中(1.15、1.04~1.27)のリスク増大と関連することが認められた。
同様に、全死因死亡との関連が、中期的(1.15、1.06~1.26)および短期的(1.10、1.04~1.16)変動でも認められた。
著者は、「血圧の長期的変動は心血管および死亡のアウトカムと関連し、平均血圧の効果を上回るものであった。その関連の大きさは、コレステロール値と心血管疾患と同程度であった。またデータは限定的であったが、中期的、短期的変動でも同様の関連が認められた」と述べ、「さらなる検討では、血圧変動評価の臨床的意味に焦点を合わせ、これまでよく見られたありふれた交絡ピットフォールは回避しなければならない」とまとめている。