切除後の高リスクStage III悪性黒色腫の術後補助療法として、イピリムマブは一定の有害事象の負担はあるものの無再発生存(RFS)期間を10ヵ月以上延長し、全生存(OS)の改善をもたらすことが、フランス・Gustave Roussy Cancer Campus Grand ParisのAlexander MM Eggermont氏らが進めるEORTC 18071試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年10月8日号に掲載された。イピリムマブは、T細胞上のCTLA-4に選択的なIgG-1の完全ヒト型モノクローナル抗体で、進行悪性黒色腫の治療薬(3mg/kg)として、2011年、欧米で承認を得ている。その後の第II相試験では、用量0.3および3mg/kgに比べ10mg/kgの効果が優れることが報告されている。
術後10mg/kg投与の有用性をプラセボ対照無作為化試験で評価
EORTC 18071は、根治切除後のStage III悪性黒色腫の術後補助療法において、イピリムマブの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。
すでに、このレジメンは、フォローアップ期間中央値2.7年時の結果(RFSのハザード比[HR]:0.75、p=0.001)に基づき、2015年に米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ており、今回は、中央値5.3年の解析結果が報告された。
対象は、年齢18歳以上、組織学的に皮膚悪性黒色腫が確認され、Stage IIIA(1つ以上の>1mmの転移を有するリンパ節が1個のみ)、IIIB、in-transit転移(原発巣から2cm以上離れ、最も近いリンパ節までの間に存在する転移巣)がないIIICの患者で、根治的領域リンパ節切除術を施行された者であった。
被験者は、イピリムマブ(10mg/kg、静注)を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。治療は、3週ごとに4回投与後、3ヵ月ごとに最長3年間、またはこの間に再発するか、許容できない毒性が発現するまで行われた。
主要評価項目はRFS、副次評価項目にはOS、無遠隔転移生存(DMFS)、安全性が含まれた。RFSは、割り付け時から初回再発(局所、領域、遠隔転移)および全死因死亡が発現するまでの期間と定義した。
2008年7月~2011年8月までに、19ヵ国99施設に951例が登録され、イピリムマブ群に475例、プラセボ群には476例が割り付けられた。
5年RFS、OS、DMFSが約10%改善、Grade 3/4有害事象は高頻度
ベースラインの年齢中央値は、イピリムマブ群が51歳(範囲:20~84)、プラセボ群は52歳(同:18~78)、男性がそれぞれ62.3%、61.6%を占めた。リンパ節転移数は、1個がイピリムマブ群45.7%、プラセボ群46.2%、2/3個がそれぞれ34.3%、33.2%、4個以上は20.0%、20.6%であり、潰瘍形成はそれぞれ41.5%、42.6%に認められた。
5年RFS率は、イピリムマブ群が40.8%と、プラセボ群の30.3%に比べ有意に優れた(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.64~0.89、p<0.001)。RFS期間中央値は、それぞれ27.6ヵ月(95%CI:19.3~37.2)、17.1ヵ月(95%CI:13.6~21.6)だった。
5年OS率は、イピリムマブ群が65.4%であり、プラセボ群の54.4%よりも有意に良好であった(HR:0.72、95.1%CI:0.58~0.88、p=0.001)。
また、5年DMFS率は、イピリムマブ群が48.3%と、プラセボ群の38.9%よりも有意に良好であった(HR:0.76、95.8%CI:0.64~0.92、p=0.002)。DMFS期間中央値は、それぞれ48.3ヵ月(95%CI:35.5~71.6)、27.5ヵ月(95%CI:21.9~34.8)だった。
Grade 3/4の有害事象の発現率は、イピリムマブ群が54.1%であり、プラセボ群の26.2%に比べて高かった。Grade 3/4の免疫介在性有害事象も、それぞれ41.6%、2.7%と、イピリムマブ群の頻度が高かった。
イピリムマブ群で最も頻度の高いGrade 3/4の免疫介在性有害事象は消化器系(16.1%)で、次いで肝臓(10.8%)、内分泌系(7.9%)の順であり、免疫介在性有害事象による死亡が5例(1.1%)認められた。
著者は、「今回のアップデート解析では、毒性という代償はあるが、以前に観察されたRFSの延長が確証され、これがOSおよびDMFSの改善に転化していることが示された」とまとめ、「有害事象の多くは一過性であった」としている。
(医学ライター 菅野 守)