精管切除と前立腺がんリスクに関連性は認められないことが、カナダ・トロント大学Madhur Nayan氏らが行ったオンタリオ州の住民を対象とした大規模集団適合コホート研究の結果、示された。先行研究では、両者の関連について相反する結果が示されており、またそれらの結果は、試験規模やバイアスなどにより限定的なものであった。BMJ誌2016年11月3日号掲載の報告。
精管切除を受けた32万例について適合コホート研究で評価
研究グループは、1994~2012年のオンタリオ州のヘルスデータ(多変量について検証済み)を用いて、適合コホート研究を行った。先行研究の限界などを基に設定した健康に関する探索行動指標について補正を行い、精管切除と前立腺がんとの関連を調べた。
データから特定した、20~65歳の男性で精管切除を受けた32万6,607例と、年齢(±2歳)、コホート登録年、併存疾患スコア、および地理的要因で適合した精管切除を受けなかった対照32万6,607例を比較検討した。
主要アウトカムは、前立腺がんの発症率とした。副次アウトカムは、前立腺がんの悪性度、ステージ、そして死亡率であった。
補正前の関連ハザード比1.13、補正後は1.02
追跡期間中央値10.9年後において、前立腺がん3,462例を特定した。精管切除群は1,843例(53.2%)、非精管切除群は1,619例(46.8%)であった。
未補正解析の結果、精管切除は、前立腺がんの発症をわずかに増大することが認められた(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.05~1.20)。
しかしながら、健康探索行動指標(コホート登録前の専門医受診やその後の一般医受診など)について補正後、同様の関連性は認められなかった(補正後HR:1.02、95%CI:0.95~1.09)。さらに、精管切除と、悪性度の高い前立腺がん(補正後OR:1.05、95%CI:0.67~1.66)、転移性前立腺がん(同:1.04、0.81~1.34)、死亡(同:1.06、0.60~1.85)との関連はいずれもみられなかった。
著者は、「結果は、精管切除と前立腺がんの独立した関連性を支持しないものであった」と結論している。