アブレーション周術期の抗凝固、ダビガトランが有用/NEJM

心房細動(AF)へのカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法において、ダビガトランの継続投与はワルファリンに比べ大出血イベントの発生が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス医学研究所のHugh Calkins氏らが行ったRE-CIRCUIT試験で示された。脳卒中や全身性塞栓症は発現しなかったという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月19日号に掲載された。ダビガトランなどの非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、ワルファリンよりも安全性が優れる可能性が示唆されているが、これを検証したデータはこれまでなかった。
635例で大出血を評価する無作為化試験
本研究は、日本を含む11ヵ国104施設が参加する非盲検無作為化対照比較試験であり、2015年4月~2016年7月に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheim社の助成による)。カテーテルアブレーションが予定されている発作性および持続性の非弁膜症性AF患者が、2つの抗凝固薬に無作為に割り付けられた。このうち実際にアブレーションを受けた635例(ダビガトラン群:317例、ワルファリン群:318例)が解析の対象となった。
ダビガトランは150mgを1日2回投与し、ワルファリンは国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標値とした。アブレーションは4~8週間の継続的抗凝固療法後に施行され、アブレーション中および施行後8週間の継続的抗凝固療法が行われた。
主要評価項目は、アブレーション中および施行後8週間までの大出血の発生とし、副次評価項目には血栓塞栓症などの出血イベントが含まれた。
大出血イベント:1.6 vs.6.9%
ベースラインの平均年齢は、ダビガトラン群が59.1歳、ワルファリン群は59.3歳、男性がそれぞれ72.6%、77.0%を占めた。発作性AFが67.2%、68.9%であり、平均活性化全血凝固時間は330秒、342秒、平均CHA2DS2-VAScスコアは2.0、2.2であった。アブレーション中および施行後8週間までの大出血イベントの発生率は、ダビガトラン群が1.6%(5例)と、ワルファリン群の6.9%(22例)に比べ有意に低かった(リスクの絶対差:-5.3%、95%信頼区間[CI]:-8.4~-2.2、p<0.001)。ダビガトラン群の相対的なリスク低下率は77.2%であった。Cox比例ハザード解析では、ハザード比(HR)は0.22(95%CI:0.08~0.59)だった。
ダビガトラン群は、大出血イベントのうち心膜タンポナーデ(1 vs.6件)および鼠径部血腫(0 vs.8件)が少なく、アブレーション中~施行後1週間の大出血(4 vs.17件)が少なかった。また、ダビガトラン群の大出血のうち、処置を要したのは心膜タンポナーデの4例(心膜ドレナージ)のみで、特異的中和薬イダルシズマブを要する患者はいなかった。
ダビガトラン群では脳卒中、全身性塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)は認めず、ワルファリン群ではTIAが1例にみられた。小出血イベントの頻度は両群でほぼ同等であった(ダビガトラン群:18.6%、ワルファリン群:17.0%)。また、大出血と血栓塞栓イベント(脳卒中、全身性塞栓症、TIA)の複合エンドポイントの発生率は、ダビガトラン群が低かった(1.6 vs.7.2%)。
重篤な有害事象は、ダビガトラン群の18.6%、ワルファリン群の22.2%にみられたが、致死的イベントは発現しなかった。重度有害事象はダビガトラン群で少なく(3.3 vs.6.2%)、投与中止の原因となった有害事象の頻度は両群とも低かった(5.6 vs.2.4%)。
著者は、「ダビガトランの大出血イベントの抑制作用は、より特異的な作用機序に関連する可能性があり、凝固因子産生の抑制作用よりも、直接的なトロンビン阻害作用によると考えられる」とし、「これらのアウトカムは、ダビガトランの有用性が示されたRE-LY試験の結果と一致する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
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ワルファリンはなぜ負け続けるのか?(解説:香坂 俊 氏)-668
コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏
慶應義塾大学 循環器内科 准教授
J-CLEAR評議員