血管内治療は、急性虚血性脳卒中患者の施行後90日時の機能的転帰を改善することが、MR CLEAN試験で確認されているが、この良好な効果は2年時も保持されていることが、本試験の延長追跡評価で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された。報告を行ったオランダ・Academic Medical CenterのLucie A van den Berg氏らは、「90日時の良好な効果はいくつかの試験やメタ解析で示されているが、長期的な転帰の情報はなく、これらの結果は実地臨床に有益と考えられる」としている。
391例で血管内治療追加の2年時の効果を評価
MR CLEAN試験は、オランダの16施設が参加する無作為化試験であり、2010年12月~2014年3月に患者登録が行われた(オランダ保健研究開発機構などの助成による)。今回は、延長追跡試験の2年時の結果が報告された。
対象は、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど神経学的重症度が高度)が2点以上、脳前方循環の頭蓋内動脈近位部閉塞による急性虚血性脳卒中で、発症後6時間以内の患者であった。
被験者は、従来治療+血管内治療(介入群)と従来治療単独(対照群)に無作為に割り付けられた。従来治療は、ガイドラインに準拠した最適な治療法とし、アルテプラーゼの静脈内投与などが含まれた。血管内治療は、主にステント型血栓回収デバイスを用いた機械的血栓除去術が行われた。
主要評価項目は、2年時の修正Rankinスケール(mRS)のスコアとし、機能的転帰を0(症状なし)~6(死亡)で評価した。副次評価項目は、2年時の全死因死亡、QOLなどであった。QOLは、EQ-5D-L3質問票(-0.329~1点、点数が高いほど健康状態が良好)に基づく健康効用指標を用いて評価した。
元の試験に含まれた500例のうち、391例(78.2%)から2年間の追跡データが得られた(介入群:194例、対照群:197例)。死亡に関する情報は459例(91.8%)で得られた。
2年時も、mRS、QOLが有意に良好
ベースラインの全体の年齢中央値は66歳、58.6%が男性であり、NIHSS中央値は18点(IQR:14~22)であった。約9割がアルテプラーゼ静脈内投与を受け、発症から投与までの期間中央値は85分であった。介入群の発症から鼠径部穿刺までの期間中央値は263分だった。
2年時のmRSスコア中央値は、介入群が3点(IQR:2~6)と、対照群の4点(同:3~6)よりも良好であった(補正共通オッズ比[OR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.15~2.45、p=0.007)。
極めて良好な転帰(mRSスコア:0または1点)の患者の割合は、介入群が7.2%、対照群は6.1%であり、両群に有意な差は認めなかった(補正OR:1.22、95%CI:0.53~2.84、p=0.64)。一方、良好な転帰(mRSスコア:0~2点)の患者の割合は、それぞれ37.1%、23.9%(2.21、1.30~3.73、p=0.003)、好ましい転帰(mRSスコア:0~3点)は55.2%、40.6%(2.13、1.30~3.43、p=0.003)と、いずれも介入群が有意に優れた。
2年累積死亡率は、介入群が26.0%、対照群は31.0%であり、両群に差はみられなかった(補正ハザード比:0.9、95%CI:0.6~1.2、p=0.46)。QOLスコアの平均値は、介入群が0.48と、対照群の0.38に比べ有意に良好だった(平均差:0.10、95%CI:0.03~0.16、p=0.006)。
90日~2年の間に、主要血管イベントが8例に発現した。介入群は239人年に5例(0.02/年)、対照群は235人年に3例(0.01/年)の割合であり、両群に有意な差はなかった。
著者は、「90日と2年時の結果は類似していたが、異なる点として、(1)延長追跡期間中に、介入群の死亡率が対照群よりも低くなった(有意差はない)のに対し、90日時の死亡リスクは2群でほぼ同様だった、(2)2年時のmRSスコア0~1の患者の割合が、両群とも90日時よりも低下したことが挙げられる」とし、後者の説明として「脳卒中が日常の活動性に及ぼす影響が十分に明らかでない時点で早期にリハビリを開始し、その後、支援の少ない自宅での生活を続けたため、機能的能力のわずかな変化だけで、mRSスコア0の患者が1~2に進行した可能性がある」と推察している。
(医学ライター 菅野 守)