これまでに200件超の検討(システマティックレビュー、メタ解析、メンデル無作為化試験)で、尿酸値と136個のヘルスアウトカムの関連が報告されていたが、尿酸値との明確な関連のエビデンスが存在するのは、痛風と腎結石だけだという。英国・エディンバラ大学のXue Li氏らが明らかにしたもので、「可能な限りのエビデンスを入手したが、高尿酸血症に関連した臨床での現行の推奨変更を支持するものはなかった」とまとめている。BMJ誌2017年6月7日号で発表した。
観察研究、無作為化試験、メンデル無作為化試験のエビデンスを精査
これまでに観察研究では同関連について、心血管および代謝性疾患のリスク増大や神経系の疾患リスクの低下などが示唆されているが、確証はない。また、尿酸値降下の臨床試験で、キサンチンオキシダーゼの阻害が血圧を降下し腎機能を改善することが示唆され、尿酸値が全身性炎症に関係するキサンチンオキシダーゼ活性などの因子の簡易なマーカーとなり得るか、議論が続いていた。
研究グループは、尿酸値と多様なヘルスアウトカムの関連について、観察研究、無作為化試験およびメンデル無作為化試験からのエビデンスを複合レビューする検討を行った。Medline、Embase、Cochrane Database of Systematic Reviewsおよび参考文献のスクリーニングから該当文献を検索。適格基準論文は、尿酸値とヘルスアウトカムの関連を調べたシステマティックレビュー&メタ解析の報告、尿酸値降下治療に関連してヘルスアウトカムを調査した無作為化試験のメタ解析の報告、尿酸値とヘルスアウトカムの因果関係を探索したメンデル無作為化試験の報告とした。
痛風と腎結石以外の関連エビデンスは示されず
検索の結果、観察研究論文57本(システマティックレビュー15件、メタ解析144件)、無作為化試験のメタ解析論文8本、メンデル無作為化試験36本が適格基準を満たした。
全体で、136の特色あるヘルスアウトカムが報告されていた。
観察研究のメタ解析で報告されたアウトカム76個(心血管13、糖尿病関連9、腎障害7、認知障害11、がん6、全死因・特異的死亡22、その他8)のうち、16個がp<10
-6であった。無作為化試験のメタ解析で報告されたアウトカム20個(腎障害10、内皮機能2、死亡4、その他4)では、8個がp<0.001であった。メンデル無作為化試験の報告アウトカム56個(身体計測変数9、心血管15、代謝異常5、腎障害6、認知障害5、代謝産物11、全死因・特異的死亡3、その他2)では、4個がp<0.01であった。
概して試験間の不均一性の差が大きく(観察研究のメタ解析80%、無作為化試験のメタ解析は45%)、観察研究のメタ解析42件(55%)と無作為化試験のメタ解析7件(35%)のエビデンスは、試験効果が小さくまたはバイアスが過剰に有意であった。
観察研究のメタ解析からの関連性(5つの関連:尿酸値高値と心不全、高血圧、血糖障害または糖尿病、慢性腎臓病[CKD]、冠動脈性心疾患死のリスクの増大)については、非常に示唆的であるとの理由で、根拠に乏しいものと分類された。
無作為化試験のアウトカムでは1個のみ(尿酸値降下治療で腎結石の再発リスクが低下)がp<0.001を示し、95%予測区間にゼロ値を含まず、大きな不均一性およびバイアスもみられなかった。
またメンデル無作為化試験のアウトカムでも1個のみ(尿酸値高値は痛風リスクを増大)で、確たるエビデンスがみられた。
メタ解析の所見を比較した検討において、高血圧とCKDは、観察研究のメタ解析ではエビデンスがあることが示された。無作為化試験のメタ解析では、いずれも不完全もしくは代替アウトカムでエビデンスがあることが示されたが、メンデル無作為化試験については統計的に有意なエビデンスは示されなかった。
(ケアネット)