英国の将来的な認知症者は、どれぐらいになるのか。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSara Ahmadi-Abhari氏らが、2002年以降の発症傾向を基にしたモデル研究で推算し、2040年には2016年現在よりも57%増しの120万人になるとの予測を発表した。最大では190万人に達する可能性もあるという。これまでに英国アルツハイマー病協会が、「年齢特異的認知症有病率が一定のままならば、2050年に英国の認知症者数は170万人超になるだろう」と予測をしている。一方で、英国、オランダおよび米国の研究で、認知症の発症率が減少傾向にあることが示され、研究グループは、動的モデリングアプローチにて将来の認知症の有病率を予測する検討を行った。BMJ誌2017年7月5日号掲載の報告。
認知症発症率の経年傾向を推算し、Markovモデルを作成して有病率を予測
研究グループは、イングランドおよびウェールズの一般成人集団から参加者を募り、2002~13年の間に6回にわたってEnglish Longitudinal Study of Ageing(ELSA)研究を行った。初回ELSA(2002~03年)は1998~2001年の英国健康サーベイの参加者から募集し、男女計1万2,099例が参加した(参加率67%)。その中には50歳以上1万1,392例、同居カップル707組が含まれていた。対象集団の代表性を維持するために、その後、第3回(2006~07年、50~55歳)、第4回(2008~09年、50~74歳)、第6回(2012~13年、50~55歳)に健康で元気な参加者をそれぞれ募集。全解析には第1~6回研究参加者計1万7,906例が組み込まれた。
縦断的およびtime-to-eventデータをELSAデータと組み合わせ、追跡不能となった参加者によるバイアスを修正して、認知症発症率の経年傾向を推算した。また、Markov確率モデルIMPACT-BAM(IMPACT-Better Ageing Model)を作成し、将来の認知症有病率を予測した。IMPACT-BAMは、35歳以上集団の、心血管疾患、認知および機能障害、認知症のそれぞれの状態による死亡までの移行をモデル化したもので、認知症有病率を予測すると同時に、平均余命延長、死亡率や心血管疾患の発生率の変化によりもたらされる影響を受けて増大する集団を示すことが可能であった。
発症率の低下がない場合は2040年に190万人以上
ELSAにおいて、2010年の50歳以上の認知症発症率は、男性が14.3/1,000人年、女性が17.0/1,000人年であった。認知症発症率は、2002~13年に各年相対率で2.7%(95%信頼区間[CI]:2.4~2.9)ずつ減少していた。
IMPACT-BAM用いた分析で、2016年のイングランドおよびウェールズにおける認知症者数は、約76万7,000人(95%不確定性区間[uncertainty interval:UI]:73万5,000~79万7,000)であった。認知症者数は、発症率および年齢特異的有病率の減少にもかかわらず、2020年には87万2,000人、2030年には109万2,000人、2040年には120万5,000人になると示された。
発症率の低下がない場合の感度解析では、将来の認知症者数はより大規模になり、2040年の認知症者は190万人以上になると予想された。
(ケアネット)