臨床試験の透明性、製薬企業間に大きなばらつき/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/03

 

 臨床試験の透明性に関する製薬企業のコミットメントを調べたところ、きわめてばらつきが大きいことが判明した。一方で、試験結果の公表や臨床試験登録などの透明性に関する具体的な調査項目すべてにおいて、最良の選択をしている企業が1社あり、すべての企業が最良の選択をすることは不可能でないことも示されていたという。英国・オックスフォード大学のBen Goldacre氏らが、世界の製薬企業42社を対象に行った調査で明らかにし、BMJ誌2017年7月26日号で発表した。

日本企業6社を含む42社の方針を調査
 研究グループは、世界の製薬企業42社を対象とした構造化監査(structured audit)により、企業が行った前向き・後ろ向き試験に関する結果サマリーや臨床試験報告書、匿名化された患者個人データに関しての公開性、また臨床試験登録について、各企業の方針を調査した。

 試験対象とした42社のうち、企業活動のベースが欧州連合(EU)にあるのが22社、米国が13社、日本が6社、カナダが1社だった。それらのうち40社(95%)が、方針を公表しており、研究グループは合計527ページに及ぶ同方針に関する書類を調査した。

透明性確保の最良実施企業は1社
 企業が示す方針には、きわめてばらつきがあることが判明した。売上高で世界上位25社のうち適格基準を満たした23社において、すべての臨床試験を登録するとの方針を示していたのは21社(91%)だった。また、試験結果サマリーを公表するとの方針を示していたのは22社(96%)だった。しかし、その公表時期については明確に決めていない企業が多く、未承認薬や適応外処方に関する試験についても公表すると定めていたのは6社(26%)にとどまった。また、過去の試験結果サマリーについても公表するとしていたのは17社(74%)で、そのことを方針として明示し始めた時期の中央値は2005年だった。

 臨床試験報告書の公表については、23社中22社(96%)が公表するとの方針を示していたが、その大部分が「リクエストに応じて」というものだった。また、2社については「報告書の概要のみを公表する」としており、未承認薬に関する試験についても公表する方針を示していたのは2社のみだった。

 匿名化された患者個人データについて公開する方針を示していたのは、23社中22社(96%)だった。そのうち、第IV相試験も公表するとしていたのは14社で、未承認・適応外処方の試験についても公表するとしていたのはわずか1社のみだった。

 そのほか、事業規模が小さい企業は透明性に関するコミットメントを掲げるところが少なかった。また、登録に関する方針で業界コミットメントの域に達していないところが2社、同様に3社が結果サマリーに関して達していなかった。それら企業が作成した文書やサマリーには、矛盾していたり曖昧な文言が認められた。

 全体でフィードバックに応じたのは42社のうち23社(55%)だった。企業からのフィードバックにより修正された評価のための方針要素は7/1,806個(0.4%)だった。一方、方針を変更した企業が数社あり、即時に変更したところもあった。

 調査対象の製薬企業のうち、臨床試験登録や結果の公表について、全質問項目で「ベストプラクティス」(最良実施例)となっていた企業は1社だった。この点を受けて研究グループは、全項目について最良な選択をすることは現実的に可能な目標であると述べている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員