高用量の従来の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショック患者に対し、合成ヒトアンジオテンシンII薬(LJPC-501)が血圧を効果的に上昇したことが、米国・クリーブランドクリニックのAshish Khanna氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATHOS-3」の結果で示された。高用量の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショックは、高い死亡率と関連しており、本検討の背景について著者は次のことを挙げている。現在利用可能な昇圧薬はカテコールアミン(交感神経刺激薬)とバソプレシンの2種のみで、いずれも高用量では毒性作用が強く治療領域が限られている。また、アンジオテンシンII薬は、低血圧発症時のホルモンのはたらきをヒントに開発が進められ、カテコールアミンとバソプレシンへの追加投与で有用性を検討したパイロット試験で、カテコールアミンの用量減少が可能なことが示唆されていた。NEJM誌2017年8月3日号(オンライン版2017年5月21日号)掲載の報告。
従来の昇圧薬に反応しない患者にアンジオテンシンIIまたはプラセボを投与
試験は2015年5月~2017年1月に、9ヵ国(北米、オーストララシア、欧州)75ヵ所のICUで実施された。ノルエピネフリン0.2μg/kg/分超または他の昇圧薬を同等の用量で投与されている血管拡張性ショック患者を、アンジオテンシンII静注群もしくはプラセボ静注群に無作為に割り付け検討した。なお無作為化では、スクリーニング時の平均動脈圧による層別化(65mmHg未満または65mmHg以上)、APACHE IIスコアによる層別化(30以下、31~40、41以上[スコア範囲:0~70、高スコアほど疾患重症度が高いことを示す])も行われた。
主要エンドポイントは、静注開始後3時間時点の平均動脈圧への効果で、治療中の昇圧薬の増量なしで、ベースラインから10mmHg以上の上昇または75mmHg以上に上昇と定義した。また、副次有効性エンドポイントとして、ベースライン評価から48時間までの心血管関連の臓器機能不全評価(SOFA)スコア(スコア範囲:0~4、高スコアほど重度)の変化を、さらに総SOFAスコア(スコア範囲:0~20、高スコアほど重度)を評価した。安全性については、重篤有害事象、有害事象関連の投薬中断、全有害事象、全死因死亡を、7日および28日時点で評価した。
静注開始後3時間時点の昇圧、アンジオテンシンII群で有意に多く達成
合計344例の患者が無作為化を受け、割り付け治療を受けなかった23例を除外した321例(アンジオテンシンII群163例、プラセボ群158例)が解析に包含された。
主要エンドポイントを達成したのは、アンジオテンシンII群114/163例(69.9%)、プラセボ群37/158例(23.4%)で、アンジオテンシンII群の患者が有意に多かった(オッズ比:7.95、95%信頼区間[CI]:4.76~13.3、p<0.001)。
48時間時点のSOFAスコア改善の平均値は、アンジオテンシンII群がプラセボ群よりも有意に大きかった(-1.75 vs.-1.28、p=0.01)。
重篤有害事象は、アンジオテンシンII群で60.7%、プラセボ群で67.1%報告された。28日間の死亡発生は、アンジオテンシンII群75/163例(46%)、プラセボ群85/158例(54%)であった(ハザード比:0.78、95%CI:0.57~1.07、p=0.12)。
なお試験結果は限定的であるとして著者は、割り付け方法に問題があった可能性、サンプルサイズが小さいこと、死亡への影響を評価するには検出力が不足していること、追跡期間が28日と短いことなどを挙げている。結論として、アンジオテンシンIIの静注で血圧を上昇し、高用量の昇圧薬投与を受ける血管拡張性ショック患者において、カテコールアミン投与を減らすことができたと述べている。
(ケアネット)