非喘息性急性下気道感染症の成人患者において、経口ステロイド薬は症状の持続期間や重症度を改善せず、使用すべきではないと、英国・ブリストル大学のAlastair D. Hay氏らが、プラセボ対照無作為化比較試験Oral Steroids for Acute Cough(OSAC)試験の結果、報告した。急性下気道感染症は最も一般的な疾患の1つだが、プライマリケアではしばしば抗菌薬による不適切な治療が行われている。その中で、経口ステロイド薬の使用も増加しているが、非喘息性急性下気道感染症に対する有効性については十分なエビデンスがない。JAMA誌2017年8月22・29日号掲載の報告。
約400例をプレドニゾロン群とプラセボ群に無作為化
OSAC試験は、2013年7月~2014年10月、英国のプライマリケア54施設において実施された、多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験である。対象は、下気道感染症の症状(喀痰、胸痛、喘鳴、息切れ)のうち1つ以上および急性咳嗽を有し、即時的な抗菌薬治療を必要とせず、慢性肺疾患の既往歴なし、または過去5年間に喘息治療薬の投与歴がない18歳以上の患者401例であった。プレドニゾロン(20mg×2錠)群(199例)またはプラセボ群(202例)に無作為に割り付け、それぞれ1日1回5日間投与した。
主要評価項目は、中等度以上の咳嗽の持続期間(観察期間28日間、臨床的に重要な差の最低値は3.79日と設定)、および2~4日目の症状(咳嗽、喀痰、息切れ、睡眠障害、全体的な体調不良、活動障害)の重症度(0点[影響なし]~6点[最も悪い]、臨床的に重要な差の最低値は1.66点と設定)。副次評価項目は、急性下気道感染症の症状の持続期間と重症度、ピークフロー異常値の持続期間、抗菌薬の使用および有害事象であった。
咳嗽持続期間や症状重症度に両群で差はなし
401例中2例は無作為化後すぐに離脱、1例は重複していたため除外となり、解析対象は398例であった(平均年齢47[SD 16.0]歳、女性63%、喫煙者17%、痰77%、息切れ70%、喘鳴47%、胸痛46%、ピークフロー値異常42%)。このうち334例(84%)で咳嗽持続期間が、369例(93%)で症状の重症度に関するデータが得られた。
平均咳嗽持続期間は、プレドニゾロン群で5日(四分位範囲[IQR]:3~8)、プラセボ群で5日(IQR:3~10)であった(補正ハザード比:1.11、95%信頼区間[CI]:0.89~1.39、α=0.05でp=0.36)。また、平均症状重症度は、プレドニゾロン群1.99点、プラセボ群2.16点であった(補正群間差:-0.20、95%CI:-0.40~0.00、α=0.001でp=0.05)。
その他の下気道感染症の持続期間や重症度、ピークフロー異常値の持続期間、抗菌薬の使用、重篤ではない有害事象に関しても、両群で差はなかった。重篤な有害事象は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)