南アフリカ共和国の若い男性では、儀式として行われる包皮切除からの壊疽が、陰茎損失の主な原因になっているという。この文化的行為は社会に深く根ざしており、やめさせることは容易ではない。同国ステレンボッシュ大学のAndre van der Merwe氏らは、従来の遊離皮弁を用いた陰茎整形術は、社会経済的に課題がある集団には好ましくないが、陰茎を損失した若い男性の精神社会学的影響は甚大であり、同一臓器に置き換えることが最大の便益をもたらす可能性があるとして、同種陰茎移植を実施。24ヵ月間のフォローアップの結果を報告した。Lancet誌オンライン版2017年8月17日号掲載の報告。
移植後24ヵ月追跡し、生活の質や勃起・排尿機能を評価
研究グループは、試行手技として初めに死体-死体の陰茎移植を行った。Human Research Ethics Committeeの承認を得た後、レシピエントを募り、陰茎断端長、移植に対する情動的な適合性など、身体的および精神的特性をスクリーニング。一方で、適切なドナー(36歳脳死男性)を獲得し、陰茎を採取した。
適切に選択したレシピエント(21歳男性)の陰茎断端を外科的に調整し、陰茎移植片を取り付けた。免疫抑制療法として、antithymyocyteグロブリン、メチルプレドニゾロン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、prednisoneを用いた。また、1週間後にタダラフィル5mgの1日1回服用を陰茎リハビリテーションとして開始し、3ヵ月間継続した。
評価データとして、移植前とフォローアップ中に、生活の質スコア(Short Form 36第2版[SF-36v2]質問票)を収集。また移植後24ヵ月時点の勃起機能(International Index for Erectile Function[IIEF]スコア)と尿流率を測定した。
移植後1ヵ月で退院、その1週間後に満足な性交を行ったと報告
切除後移植片の温阻血時間は4分、冷阻血時間は16時間であった。手術は9時間を要した。手術8時間後に、動脈血栓により緊急処置を必要とした。また、術後6日の時点で、感染性血腫と近位皮膚壊死に対して外科的処置が行われた。
その後、レシピエントは1ヵ月後に退院。その1週間後に、性交を行い(反対のアドバイスにもかかわらず)満足感を得たとの第一報を寄せた。さらに術後3ヵ月からは定期的な性交を行っていることを報告した。
7ヵ月時点で急性腎障害を発症したが、タクロリムス14mgの1日2回投与を減らすことで回復した。
さらに術後8ヵ月時点で、
Alternaria alternataによるフェオフィホ真菌症に罹患したが、抗真菌薬の塗布で治療した。
生活の質スコアは、術後大きく改善した。SF-36v2メンタルヘルススコアは、術前25から、移植後6ヵ月時点57、24ヵ月時点で46であった。また身体的ヘルススコアは、ベースライン時37から、移植後6ヵ月時点60、24ヵ月時点59であった。
24ヵ月時点の最大尿流率は標準値を(16.3mL/秒、排尿量109mL)、IIEFスコアも標準値(全体的満足度スコアは最大10のうち8)を示し、排尿機能、勃起機能ともに正常であった。
これらを踏まえて著者は、「陰茎移植は、移植後24ヵ月に重大な合併症を有することなく、レシピエントに自然な生理機能回復をもたらした」と結論している。
(ケアネット)