駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、NT-proBNPガイド治療戦略のアウトカム改善効果は、標準治療によるものと変わらないことが、米国・デューク臨床研究所(DCRI)のG. Michael Felker氏らによる大規模無作為化試験「GUIDE-IT試験」の結果、示された。ナトリウム利尿ペプチドは、HF重症度のバイオマーカーであり、有害アウトカムの予測因子である。これまで小規模試験で、ナトリウム利尿ペプチド値をベースに調整を行うHF治療(ガイド治療)の評価は行われているが、結果は一貫していなかった。JAMA誌2017年8月22日号掲載の報告。
無作為化試験で標準治療と比較、HF初回入院までの時間または心血管死を評価
GUIDE-IT(Guiding Evidence Based Therapy Using Biomarker Intensified Treatment in Heart Failure)試験は、2013年1月16日~2016年9月20日、米国およびカナダの臨床施設45ヵ所で行われた。試験は計画では、HFrEF(駆出率40%以下)で、30日以内にナトリウム利尿ペプチド値の上昇がみられ、HFイベント(HF入院、HFでER受診、外来でHF利尿薬静注治療)の既往歴がある1,100例を、NT-proBNPガイド治療戦略群または標準治療群に無作為化する予定であった。
NT-proBNPガイド治療戦略では、NT-proBNP値1,000pg/mL未満達成を目指したHF滴定治療を、通常治療では、公表ガイドラインに従い実証済みのHF神経内分泌系治療の滴定を重視した治療が行われた。NT-proBNP値の連続測定検査は、通常治療では行われなかった。
主要エンドポイントは、初回HF入院までの期間または心血管死の複合であった。事前規定の副次エンドポイントは、全死因死亡、全HF入院数、心血管系による入院のない生存日数、主要エンドポイントの各要素、有害事象などであった。
主要および副次アウトカムともに有意差なし
試験は、894例(年齢中央値63歳、女性32%)が登録された時点で無益性が明らかになり、データおよび安全性モニタリング委員会によって試験中断が勧告された。追跡期間は中央値15ヵ月であった。
主要エンドポイントの発生は、NT-proBNPガイド治療戦略群(446例)が164例(37%)、標準治療群(448例)も164例(37%)であった(補正後ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.79~1.22、p=0.88)。
心血管死の発生率は、NT-proBNPガイド治療戦略群12%(53例)、標準治療群は13%(57例)であった(HR:0.94、95%CI:0.65~1.37、p=0.75)。
副次エンドポイントについても、いずれも群間の有意差は認められなかった。また、NT-proBNP値の低下についても、12ヵ月間でガイド治療戦略群が中央値2,568pg/mLから1,209pg/mLに低下(減少率53%)、標準治療群は2,678pg/mLから1,397pg/mLに低下し(減少率48%)、群間で有意差はなかった。
(ケアネット)