Vi-破傷風トキソイド結合型(Vi-TT)ワクチン接種は、18~60歳の腸チフスの疾病負荷を軽減し健康格差を減らす可能性が示された。英国・オックスフォード大学のCelina Jin氏らが、健康なボランティア成人を対象に行った初となるヒト対象の第IIb相単一施設無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月28日号で発表した。世界の貧困地域では毎年、チフス菌亜型
(S Typhi)に約2,000万人が感染し、20万人が死亡している。莢膜Vi多糖体蛋白結合型ワクチン(Vi結合型ワクチン)は免疫原性があり乳児期から使用できるが、接種普及のための主要ワクチン候補とするには有効性に関するデータが乏しく、そのギャップを埋めるため、研究グループは、S Typhiの感染確立モデルを使ってVi-TTワクチンの有効性を評価した。
ワクチン接種1ヵ月後にチフス菌を経口投与
研究グループは2015年8月18日~2016年11月4日の間に、腸チフスのワクチン接種歴および感染症歴なし、または腸チフス流行地域の長期滞在歴がない18~60歳の健康なボランティアを集めて、試験を行った。
被験者を無作為に3群に分け、Vi-TTワクチン、Vi多糖体蛋白結合型(Vi-PS)ワクチン、髄膜炎ワクチン(対照群)をそれぞれ単回投与した。被験者と試験担当医は接種割り付けについてマスキングされたが、ワクチン接種を担当した看護師は認識していた。
被験者は、ワクチン接種の約1ヵ月後にチフス菌の経口投与(チャレンジ試験)を受け、その後2週間にわたり毎日血液検査を受け、腸チフス感染症罹患(38℃以上、12時間以上の持続的発熱またはチフス菌血症)の診断を受けた。
主要エンドポイントは、腸チフス感染症者の割合(罹患率)であった。
腸チフス罹患率、対照群77%、Vi-TT群とVi-PS群は35%
被験者は112例(Vi-TT群41例、Vi-PS群37例、対照群34例)で、そのうち、チャレンジ試験を完了した103例を対象に分析を行った。
腸チフス感染基準を満たし罹患したと診断された割合は、対照群77%(24/31例)だったのに対し、Vi-TT群(13/37例)、Vi-PS群(13/35例)はいずれも35%で、ワクチン有効率は、Vi-TT群54.6%(95%信頼区間:26.8~71.8)とVi-PS群52.0%(同:23.2~70.0)だった。
セロコンバージョンは、Vi-TT群が100%、Vi-PS群が88.6%で達成が認められ、ワクチン投与後1ヵ月の幾何平均抗体価はVi-TT群で有意に高率だった。
試験期間中、重篤な有害事象が4件(Vi-TT群1件、Vi-PS群3件)報告されたが、いずれもワクチンとの関連は認められなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)