静脈血栓塞栓症を呈した患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与は、ワルファリン投与に比べ、治療開始90日以内の大出血リスクや全死因死亡リスクを増大しないことが示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、6万人弱を対象に行った大規模コホート試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年10月17日号で発表した。これまでに、無作為化試験でDOACのワルファリンに対する非劣性は示されていたものの、臨床試験の被験者は高度に選択的であるため、実際の臨床現場におけるルーチン投与の状況を反映したものなのか疑問の余地があった。
90日以内の大量出血、総死亡リスクを比較
研究グループは、2009年1月1日~2016年3月31日にかけて、カナダと米国の6州のヘルスケアデータを用いて傾向スコアでマッチングした、住民ベースの後ろ向きコホート試験を行った。試験対象期間中に静脈血栓塞栓症の新規診断を受け、診断後30日以内にDOACまたはワルファリンの処方を受けた5万9,525例のデータを分析し、DOACの安全性についてワルファリンと比較検討した。
アウトカムは、大出血による入院または救急部門受診と、治療開始後90日以内の全死因死亡率などだった。傾向スコアマッチング法と共用異質性モデルにより、DOACとワルファリンの補正後ハザード比を推定した。
CKDの有無、年齢、性別で分けても安全性は同等
5万9,525例について、追跡期間平均値85.2日の間に、1,967例(3.3%)が大出血を呈し、死亡は1,029例(1.7%)だった。
大出血リスクは、DOAC服用群とワルファリン服用群で同程度だった(プールハザード比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.82~1.03)。また、死亡リスクも、両群間の差は認められなかった(同:0.99、0.84~1.16)。
なお、試験を実施した医療施設間に不均一性はなく、示された結果について、患者の慢性腎臓病(CKD)の有無、年齢、性別などによる違いは認められなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)