根治切除可能な直腸がん患者において、従来の腹腔鏡下手術と比較し、ロボット支援下手術は開腹術への移行リスクを有意に低下させることはなく、ロボット支援下手術の経験にばらつきがある医師が実施する場合、直腸がん切除術におけるロボット支援下手術の利点はないことが示唆されたという。英国・セント・ジェームス大学病院のDavid Jayne氏らが、直腸がんに対するロボット支援下手術と従来の腹腔鏡下手術を比較したROLARR試験の結果を報告した。ロボット支援下手術は、腹腔鏡下手術の課題を克服する可能性があり人気を集めているが、その安全性と有効性に関するデータは限られていた。JAMA誌2017年10月24日号掲載の報告。
直腸がん患者約500例で、ロボット支援下手術と従来の腹腔鏡下手術を比較
ROLARR試験は、医師40人を含む10ヵ国29施設で実施された国際多施設共同無作為化非盲検試験である。
2011年1月7日~2014年9月30日に根治切除可能な直腸腺がん患者471例を登録し、ロボット支援下手術群(237例)と腹腔鏡下手術群(234例)に無作為に割り付け、術後30日および6ヵ月時に追跡調査を行った(最終追跡調査は2015年1月16日)。術式は、高位前方(直腸上部)切除術、低位前方(全直腸)切除術、または腹会陰式直腸(直腸と会陰)切断術のいずれかとした。
主要アウトカムは、開腹術への移行率(開腹移行率)であった。副次エンドポイントは、術中および術後合併症、切除断端陽性(CRM+)および病理学的評価、QOL(SF-36、MFI-20)、膀胱および性機能障害(国際前立腺症状スコア、国際勃起機能スコア、女性性機能スコア)、30日手術死亡率などで、intention-to-treat解析にて評価した。
開腹移行率およびCRM陽性率に両手術で有意差なし
471例(平均年齢64.9±11.0歳、男性320例[67.9%])のうち、466例(98.9%)が試験を完遂した。
開腹移行率は、全体では10.1%であり、腹腔鏡下手術群が12.2%、ロボット支援下手術群は8.1%であった(補正後オッズ比[OR]:0.61、95%CI:0.31~1.21、p=0.16)。CRM+率は、全体で5.7%、腹腔鏡下手術群6.2%、ロボット支援下手術群5.1%であった(補正後OR:0.78、95%CI:0.35~1.76、p=0.56)。事前に定義した8つの副次評価項目のうち、術中・術後合併症、病理学的評価、30日手術死亡率、膀胱機能障害および性機能障害は、両群間で有意差は確認されなかった。
なお、著者は研究の限界として、開腹移行率が予想より低かったこと、非盲検試験であること、外科医はロボット支援下手術の学習段階にあると思われることなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)