米国で影響力の大きい医学雑誌52誌の編集委員医師のうち、2014年に製薬企業などから何らかの金銭を受け取った委員は約半数を占め、また研究費を受け取った委員は約2割いたことなどが明らかにされた。カナダ・トロント大学のJessica J. Liu氏らが、米国メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が公表している、製薬企業などから医師への支払いに関するデータベースUS Open Paymentsを基に、後ろ向き観察試験を行って明らかにしたもので、BMJ誌2017年10月26日号で発表された。
713人の編集委員について調査
研究グループは、26の医学専門領域で影響力が大きい米国で発行の52誌において、発行人欄に名前のある編集委員以上の医師713人を対象に、製薬企業などとの金銭授受について調査を行った。
金銭の提供を受けた医師の割合や、その金額について、個々の医学誌、また専門領域ごとに分析・比較した。
一般費の平均は約2万8,000ドル、研究費の平均は約3万8,000ドル
調査対象となった編集委員医師713人中、2014年に製薬企業などからコンサルティング料や講演料、食費、旅費などの一般費(general payments)の提供を受けたのは、約半数の361人(50.6%)だった。また、患者の臨床試験への参加コーディネート料などとして研究費(research payment)の提供を受けた編集委員医師は139人(19.5%)だった。
一般費の1人当たり中央値は、11ドル(四分位範囲:0~2,923)で、研究費の1人当たり中央値は0ドル(同:0~0)だった。また、一般費の1人当たり平均値は、2万8,136ドル(SD:41万5,045)で、研究費の1人当たり平均値は3万7,963ドル(SD:17万5,239)だった。
一般費の提供を最も多く受けていたのは、内分泌学の編集委員医師で、その中央値は7,207ドル(四分位範囲:0~8万5,816)、次いで心臓病学が2,664ドル(同:0~1万2,912)、消化器病学696ドル(同:0~2万2)、リウマチ病学515ドル(同:0~1万4,280)、泌尿器学480ドル(同:90~669)と続いた。総合医科学で影響力の大きい医学誌の編集委員医師が企業から受け取った金額の中央値は、0ドル(同:0~14)だった。
また、52誌のウェブサイトを調べたところ、編集委員の利害の対立に関する方針の記載へ速やかに(たとえば5分以内に)アクセス可能だったのは、17誌(32.7%)にとどまった。
研究グループは、「医学誌編集委員医師へ製薬企業などが金銭を支払うことは一般的に行われており、とくに特定の専門領域については多額の支払いがしばしば認められる」と述べ、「医学誌はそうした金銭の授受が、発表論文に対する読者の信頼へ及ぼす、潜在的影響について熟慮すべきだ」と指摘している。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)