安定末梢動脈/頸動脈疾患患者に対する1日2回投与の低用量リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)+アスピリン1日1回の併用投与は、アスピリン単独投与に比べ、主要有害心血管・下肢イベントリスクを有意に低減することが、カナダ・マックマスター大学のSonia S. Anand氏らによる無作為化プラセボ対照二重盲検試験で示された。大出血は増大したが、致死的出血や重大臓器の出血は増大せず、著者は、「この併用療法は、末梢動脈疾患患者の治療において重大な進化を意味するものだ」と述べている。なお、リバーロキサバン単独(5mg)ではアスピリン単独と比べて、主要有害心血管イベントは有意に低減せず、主要有害下肢イベントは低減したが大出血の増大が認められたという。Lancet誌オンライン版2017年11月10日号掲載の報告。
7,470例を3群に分けアウトカムを比較
研究グループは2013年3月12日~2016年5月10日に、6大陸33ヵ国602ヵ所の医療機関(病院、クリニック、コミュニティ診療所[community practices])を通じて試験を行った。下肢末梢動脈疾患歴(末梢動脈バイパス術または血管形成術、手足切断術、末梢動脈疾患の客観的エビデンスを伴う間欠性跛行のいずれかを既往)、頸動脈疾患歴(頸動脈血行再建術または50%以上の無症候性頸動脈狭窄がある患者)、または足関節上腕血圧比(ABI)0.90未満の冠動脈疾患歴がある患者を対象とした。
30日間のrun-in期間の後、558施設からの登録被験者7,470例を無作為に3群に分け、リバーロキサバン(2.5mg)1日2回とアスピリン(100mg)1日1回(併用群)、リバーロキサバン(5mg)1日2回とプラセボ1日1回(リバーロキサバン単独群)、アスピリン(100mg)1日1回とプラセボ1日2回(アスピリン単独群)を、それぞれ経口投与した。
主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生だった。また、主要末梢動脈疾患アウトカムは、大切断術を含む主要有害下肢イベントとした。
低用量+アスピリン投与にベネフィット
治療期間中央値は、21ヵ月だった。主要複合エンドポイント発生率は、アスピリン単独群が7%(174/2,504例)だったのに対し、併用群は5%(126/2,492例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.57~0.90、p=0.0047)。また、大切断術を含む主要有害下肢イベントも、各群2%、1%で、併用群が有意に低かった(HR:0.54、95%CI:0.35~0.82、p=0.0037)。
一方、リバーロキサバン単独群の主要複合エンドポイント発生率は6%(149/2,474例)で、アスピリン単独群に比べ有意な低下は認められなかった(HR:0.86、95%CI:0.69~1.08、p=0.19)。しかし、大切断術を含む主要有害下肢イベント発生率は2%(40例)で、アスピリン単独群2%(60例)に比べ有意に低かった(HR:0.67、95%CI:0.45~1.00、p=0.05)。
大出血イベントの発生率は、アスピリン単独群2%(48例)に対し、併用群は3%(77例)と有意に高率だった(HR:1.61、95%CI:1.12~2.31、p=0.0089)。同様に、リバーロキサバン単独群の同発生率は3%(79例)で、アスピリン単独群に比べて有意に高率だった(HR:1.68、95%CI:1.17~2.40、p=0.0043)。ただし、治療群間のいずれの比較においても、致死的出血・非致死的頭蓋内出血・重大臓器出血について差はみられなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)