世界保健機関(WHO)の安全出産チェックリスト(Safe Childbirth Checklist)について、実施促進のためのコーチングプログラムの導入効果を検討するクラスター無作為化試験が、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のKatherine E. A. Semrau氏らにより、インドの保健施設で行われた。非導入施設と比べて、導入施設は出産介助者の必須実施項目のアドヒアランスは向上したが、出産後7日以内の複合アウトカム(周産期死亡・母体死亡・母体の重度合併症)について有意差は認められなかった。資源が乏しい環境での施設出産率は過去20年間で劇的に増加したが、ケアの質は依然として差があり、死亡率は高いままだという。安全出産チェックリストは、質を改善するためのツールで、出産アウトカムの改善に関連する行為への系統的アドヒアランスを改善するとされていた。NEJM誌2017年12月14日号掲載の報告。
60組の施設ペアについて比較試験を実施
研究グループは、インドのウッタル・プラデーシュ州の24地域にある施設を対象に、2施設を1組とした計60組について、マッチドペア比較でクラスター無作為化試験を行った。WHOの安全出産チェックリスト実施を促進するための、8ヵ月間のコーチングプログラム「BetterBirth」の効果を検証した。
出産後7日以内の周産期死亡・母体死亡・母体の重度合併症の複合アウトカムを評価した。出産後8~42日後に評価を行い、クラスタリングとマッチングで補正後、プログラムを導入した施設(介入)群と導入しなかった施設(対照)群で比較した。
また、マッチングさせた15組の施設ペアを対象に、出産の介助者が必ず実行すべき18項目のアドヒアランスを、コーチングの介入開始2ヵ月後と12ヵ月後(コーチングのセッション終了後4ヵ月時点)で比較した。
出産介助者の必須実施項目アドヒアランス、介入群では6~7割
被験者として適格だった女性16万1,107例を登録し、15万7,689例(97.9%)を対象に試験を開始。15万7,145組(99.7%)の母親と新生児について、出産から7日間のアウトカムを評価した。
観察された4,888件の出産では、出産介助者の実施項目の平均アドヒアランスは、介入開始2ヵ月の評価時点では対照群41.7%に対し介入群72.8%、介入開始12ヵ月の時点ではそれぞれ43.9%、61.7%と、いずれも介入群で有意に高かった(いずれの比較もp<0.001)。
しかし、複合アウトカム発生率は、対照群15.3%、介入群15.1%と、両群で同等だった(相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.83~1.18、p=0.90)。また、母体・周産期の副次有害アウトカムについても、両群で有意差は認められなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)