握力が5kg低いと全死亡リスクが2割高い/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/05/21

 

 握力と健康アウトカムの関連が指摘されている。英国・グラスゴー大学のCarlos A. Celis-Morales氏らは、UK Biobankのデータを解析し、握力は全死因死亡のほか、心血管疾患、呼吸器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、がんの発生やこれらの疾患による死亡と関連し、従来の診察室ベースのリスク因子に加えると、死亡や心血管疾患の予測能を改善することを明らかにした。研究の成果は、BMJ誌2018年5月8日号に掲載された。筋機能が低下するほど、死亡率や罹患率が増加することが多くの研究で示されている。また、低い握力は不良な健康アウトカムの範囲の拡大と関連し、年齢や性別に握力測定を加えると、死亡の予測能が強化されることが報告されている。

50万人以上で、疾患別の発生率、死亡率との関連を評価
 研究グループは、握力と疾患別の発生率、死亡率の関連を評価し、測定項目に加えることでリスクスコアの予測能を増強するかを検証するために、地域住民ベースの前向き研究を行った。

 2007年4月~2010年12月の期間に、年齢40~69歳の地域住民がUK Biobankに登録され、このうち握力のデータがある50万2,293例を解析に含めた。被験者は、握力の強さで4群に分類された(Q1:最も弱い群、Q2:2番目に弱い群、Q3:2番目に強い群、Q4:最も強い群)。

 握力の強さと、全死因死亡、心血管疾患、呼吸器疾患、COPD、がん(全がん、大腸、肺、乳房、前立腺)の発生率、死亡率の関連を解析した。

握力の5kg低下ごとに、死亡リスクが女性で20%、男性で16%増加
 全体の平均年齢は56.5(SD 8.1)歳、54.5%が女性であった。平均フォローアップ期間は7.1年(範囲:5.3~9.9)で、この間に1万3,322例(2.7%)が死亡した。

 握力が5kg低下するごとに、全死因死亡のハザード比(HR)は男女とも有意に上昇した(女性のHR:1.20、p<0.001、男性のHR:1.16、p<0.001)。同様に、心血管死(1.19、p<0.001、1.22、p<0.001)、呼吸器疾患死(1.31、p<0.001、1.24、p<0.001)、COPD死(1.24、p=0.01、1.19、p<0.001)、全がん死(1.17、p<0.001、1.10、p<0.001)、大腸がん死(1.17、p=0.01、1.18、p<0.001)、肺がん死(1.17、p<0.001、1.08、p=0.001)、乳がん死(1.24、p<0.001)のHRも、握力5kg低下ごとに男女とも有意に上昇したが、前立腺がん死のHR(1.05、p=0.29)には有意な差を認めなかった。これらの関連は、全般に若い年齢層のほうが、わずかに強かった。

 筋力低下(女性:握力<16kg、男性:握力<26kg)は、女性の大腸がん、男性の前立腺がん、男女の肺がんを除き、健康アウトカムのハザードの上昇と関連した。

 また、従来の診察室で測定するリスク因子(年齢、性別、糖尿病、BMI、収縮期血圧、喫煙)に、握力測定を加えると、C-indexの変化で評価した予測能が、全死因死亡(C-indexの変化:0.013、95%信頼区間[CI]:0.011~0.015、p<0.001)、心血管死(0.012、0.007~0.017、p<0.001)、心血管疾患の発症(0.009、0.007~0.010、p<0.001)に関して有意に改善された。

 著者は、「握力の潜在的な臨床的有用性を確立するには、リスクスコアやリスクスクリーニングにおける握力測定の導入に関して、さらなる検討が求められる」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)