抗うつ薬処方と体重増加の関連を10年間フォローアップした結果、抗うつ薬処方は長期にわたる体重増のリスクと関連している可能性が示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのRafael Gafoor氏らが、同国のプライマリケア・データベースを利用した住民ベースのコホート研究の結果、明らかにしたもので、BMJ誌2018年5月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬治療の必要性を示す場合は、体重増加の可能性を考慮すべきである」とまとめている。肥満は世界的な課題で、抗うつ薬の使用は広がりつつある。これまで短期試験において、抗うつ薬使用と体重増加の強い関連性が示されているが、個々の抗うつ薬に関する長期的リスクのデータは存在していなかった。
英国プライマリケア・データベースで住民コホート研究
研究グループは、英国内にある一般診療所のデータを集めたUK Clinical Practice Research Datalinkの2004~14年のデータを用いて、抗うつ薬処方と体重増加の長期的な関連性を調べた。被験者は、BMIに関する3つ以上の記録があった男性13万6,762例、女性15万7,957例。
主なアウトカムは、抗うつ薬処方、5%以上体重増の発生率、過体重または肥満への移行であった。年齢、性別、うつ病の記録、併存疾患、同時に処方された抗てんかん薬または抗精神病薬、所得レベル、喫煙、食事療法のアドバイスについて補正後のPoissonモデルを用いて、補正後率比を推算し評価した。
5%以上の体重増、処方群は非処方群の1.21倍、体重増リスクは6年間以上持続
試験開始年において、抗うつ薬を処方されていたのは、男性1万7,803例(13.0%)、女性3万5,307例(22.4%)で、平均年齢は51.5歳(SD 16.6)であった。
フォローアップ183万6,452人年において、5%以上体重増の新たなエピソード発生率は、抗うつ薬非処方群で8.1/100人年、処方群で11.2/100人年と有意差が認められた(補正後率比:1.21、95%信頼区間[CI]:1.19~1.22、p<0.001)。
体重増のリスクは、フォローアップ中、少なくとも6年間は増大が続いていた。治療2年目に、抗うつ薬治療群で5%以上体重増の新たなエピソードを認める被験者数は、27例(95%CI:25~29)であった。また、試験開始時に正常体重であった被験者で、過体重または肥満に移行した被験者の補正後率比は、1.29(1.25~1.34)、過体重だった被験者が肥満に移行した同率比は、1.29(1.25~1.33)であった。
体重増加との関連について、抗うつ薬のクラス間には大きなばらつきがみられた。
著者は、関連には因果関係がない可能性があり、残余交絡因子が関連の過大評価に寄与している可能性があるとしている。
(ケアネット)