ストレス関連の障害は、自己免疫疾患発症リスクを有意に増大することが、アイスランド大学のHuan Song氏らによる、スウェーデンの集団・兄弟姉妹適合コホートを対象とした後ろ向き研究の結果、明らかにされた。生活をするうえでのストレッサーに対する精神医学的な影響は誰にでもみられる。その影響が免疫機能不全をもたらす可能性が示唆されているが、自己免疫疾患のリスクに関与しているかは不明であった。今回の結果を受けて著者は、「さらなる研究を行い、根源的メカニズムを解明することが必要だ」とまとめている。JAMA誌2018年6月19日号掲載の報告。
ストレス関連障害曝露群を、適合非曝露群および兄弟姉妹群と比較
研究グループは、1981年1月1日~2013年12月31日に、スウェーデン生まれの住民を対象とした集団および兄弟姉妹適合後ろ向きコホート研究を行い、ストレス関連の障害が自己免疫疾患発症と関連しているかを調べた。コホートには、ストレス関連障害(外傷後ストレス障害[PTSD]、急性ストレス反応、適応障害、およびその他のストレス障害)と診断された10万6,464例(曝露群)と、それら診断歴のない適合集団106万4,640例(非曝露群)および曝露群の兄弟姉妹12万6,652例が含まれた。
ストレス関連障害と自己免疫疾患は、全国患者登録で特定した。また、Coxモデルを用いて、ストレス関連障害の診断後1年超で発症が認められた41の自己免疫疾患に関するハザード比(HR)を、多数のリスク因子で調整して、95%信頼区間(CI)とともに算出した。
非曝露群と比較した曝露群の自己免疫疾患リスクのハザード比は1.36
ストレス関連障害と診断された年齢中央値は41歳(四分位範囲:33~50)、曝露群の男性の比率は40%であった。
平均追跡期間10年間の自己免疫疾患罹患率は、1,000人年当たり、曝露群9.1、非曝露群6.0、兄弟姉妹群6.5であった。曝露群の、非曝露群に対する絶対率差は3.12(95%CI:2.99~3.25)、兄弟姉妹群に対する同差は2.49(95%CI:2.23~2.76)であった。
非曝露群と比較して、ストレス関連障害患者では、自己免疫疾患のリスクが高かった(HR:1.36、95%CI:1.33~1.40)。また、PTSD患者のHRは、あらゆる自己免疫疾患の発症リスクが1.46(95%CI:1.32~1.61)であり、複数(≧3)の自己免疫疾患のリスクは2.29(95%CI:1.72~3.04)であった。
これらの関連性は、兄弟姉妹ベースの比較においても認められた。
相対リスクの上昇は、若年患者群においてみられることが確認された。HR(95%CI)は、≦33歳群で1.48(1.42~1.55)、34~41歳群1.41(1.33~1.48)、42~50歳群1.31(1.24~1.37)、≧51歳群1.23(1.17~1.30)であった(相互作用のp<0.001)。
なお、PTSD診断後1年間にSSRI薬を服用していた場合、服用継続期間が長いほど自己免疫疾患発症リスクの有意な低下が認められた。HR(95%CI)は、≦179日では3.64(2.00~6.62)、180~319日では2.65(1.57~4.45)、≧320日では1.82(1.09~3.02)であった(傾向のp=0.03)。
(ケアネット)