南アジア新生児の重症市中感染症、原因と罹患状況/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/07/24

 

 年間50万人以上の新生児が、重症細菌感染症が疑われる病態(possible serious bacterial infections:pSBI)により死亡しているが、その原因はほとんど知られていないという。バングラデシュ・Dhaka Shishu HospitalのSamir K. Saha氏らは、南アジアの新生児における市中感染症の罹患状況を、原因病原体別に調査するコホート研究「ANISA試験」を行い、Lancet誌2018年7月14日号で報告した。

南アジア3国で、生後0~59日の新生児を調査
 本研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成によって行われ、2011~14年の期間に、バングラデシュ、インド、パキスタンの5施設で、地域住民ベースの妊娠調査を通じて新生児が同定された。

 コミュニティ・ヘルス・ワーカーが、最多で10回、生後0~59日までの新生児の自宅を訪問した。WHOのpSBIの定義を満たす徴候がみられる新生児と、ランダムに選択された健康な新生児を解析に含めた。

 血液培養および血液と呼吸器のサンプルの分子アッセイによる解析で、特異的な感染原因の評価を行った。

多くが原因不明、死亡例の原因は細菌が多い、RSウイルスの予防が重要
 6万3,114例の新生児が登録された。このうち6,022例にpSBIのエピソードがみられ(95.4例/生児出生1,000人)、2,498例が早発型(<3日)、3,524例は遅発型(3~59日)だった。

 エピソードの28%で感染原因が同定され、細菌が16%、ウイルスが12%であった。最も頻度が高かったのはRSウイルス(6.5%[95%確信区間[CrI]:5.8~7.6])で、次いでウレアプラズマspp(2.8%[1.9~3.8])であり、1%超にみられた病原体は肺炎桿菌、大腸菌、エンテロウイルス/ライノウイルス、サルモネラspp、肺炎連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌であった。

 細菌感染症の平均罹患率は13.2例(95%CrI:11.2~15.6)/生児出生1,000人、ウイルス感染症の平均罹患率は10.1例(9.4~11.6)/生児出生1,000人であった。最も平均罹患率の高い病原体は、RSウイルス(5.39例[4.84~6.31]/生児出生1,000人)で、次いでウレアプラズマspp(2.38例[1.62~3.17]/生児出生1,000人)であった。

 全生児出生7万1,361例のうち、3,061例(4%)が生後60日までに死亡し、このうち1,377例(45%)が非登録新生児(7日以内に死亡:1,284例、7日以降に死亡:93例)であり、登録新生児は1,684例(55%)だった。

 死亡したpSBIの新生児の46%で原因が同定され、生存新生児の27%に比べ高率であった。死亡したpSBI罹患新生児の92%が細菌感染であり、大腸菌(8.70%[95%CrI:5.23~13.36])とウレアプラズマspp(8.26%[4.10~12.27])の割合が高かった。

 これらの結果に基づき、著者は以下のようにまとめている。1)患者の多くで原因が不明であったことから、pSBIのエピソードの多くが感染によるものではない可能性が示唆される。2)死亡した新生児では細菌が原因となる割合が高く、新生児死亡率には、適切な予防措置や管理が実質的に影響を及ぼす可能性がある。3)非定型菌が優勢で、RSウイルスの罹患率が高かったことから、治療および予防のための管理戦略は、変更を要することが示された。4)疾病の負担を考慮すると、RSウイルスの予防が、全体的な保健システムと「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goal:SDG)」の達成に大きな効果をもたらすと考えられる。

(医学ライター 菅野 守)