鎌状赤血球症の疼痛にL-グルタミンが有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/07/27

 

 鎌状赤血球貧血症の小児/成人患者において、医薬品グレードのL-グルタミン単独またはヒドロキシ尿素併用経口投与は、プラセボ±ヒドロキシ尿素と比較し、48週間の疼痛発作回数を著明に低下させた。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の新原 豊氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果を報告した。医薬品グレードのL-グルタミン経口粉末薬は、鎌状細胞赤血球中の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの割合を上昇させることが認められており、この作用が鎌状赤血球症の複雑な病態生理に関与している酸化ストレスを減少させ、鎌状赤血球症に関連する疼痛を改善すると考えられていた。NEJM誌2018年7月19日号掲載の報告。

鎌状赤血球症患者230例でL-グルタミンの有効性および安全性をプラセボと比較
 研究グループは、2010年6月~2013年12月に、鎌状赤血球貧血症または鎌状赤血球-β0サラセミアで、過去1年間に2回以上の疼痛発作(外来または入院期間中に、救急治療部で麻薬性鎮痛薬または非ステロイド性抗炎症薬ケトロラクの非経口投与による治療を要する疼痛)の既往がある患者230例を登録し、医薬品グレードのL-グルタミン投与群(1回0.3g/kg体重を1日2回経口投与)とプラセボ投与群に2対1の割合で無作為に割り付け、48週間治療した。スクリーニングの少なくとも3ヵ月前から安定用量のヒドロキシ尿素を投与されていた患者は、48週間の治療期間中も継続可とした。

 有効性の主要評価項目は、48週間の疼痛発作回数とし、コクラン・マンテル・ヘンツェル検定を用いてintention-to-treat解析を行った。

L-グルタミンで疼痛発作が25%、入院回数が33%減少
 230例(年齢5~58歳、女性53.9%)のうち、156例が試験を完遂した(L-グルタミン群152例中97例、プラセボ群78例中59例)。

 疼痛発作回数中央値はL-グルタミン群3.0回、プラセボ群4.0回で、プラセボ群に比しL-グルタミン群で有意に減少した(p=0.005)。同様に入院回数中央値も、L-グルタミン群2.0回、プラセボ群3.0回で、L-グルタミン群が有意に少なかった(p=0.005)。

 両群とも3分の2の患者がヒドロキシ尿素の併用投与を受けていた。プラセボ群と比較しL-グルタミン群で発現率が約5%以上高かった有害事象は、悪心、非心臓性胸痛、疲労、四肢の疼痛、背部痛であった。

 なお今回の第III相試験の結果に基づき、米国食品医薬品局は2017年7月に医薬品グレードのL-グルタミンについて、5歳以上の小児および成人における鎌状赤血球症による急性合併症の軽減を適応症として承認した。

(医学ライター 吉尾 幸恵)