非心臓系疾患で入院した高齢者の7人に1人が、退院時に降圧治療が強化されていることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のTimothy S. Anderson氏らによる検討の結果、明らかにされた。強化となった患者の半数以上は、入院前の外来血圧コントロールが良好であった患者だという。著者は、「退院し自宅に戻った高齢者の降圧治療が有害なほど過度にならないように、より注意を払う必要がある」と指摘している。入院した患者の半数以上が、退院時には複数の外来薬物療法が必要となる。血圧の一過性の上昇は入院した成人患者では一般的であるが、入院が、高齢患者の外来降圧治療の強化につながるかどうかは、これまで検討されていなかった。BMJ誌2018年9月12日号掲載の報告。
非心臓系疾患で65歳以上の高血圧患者、入院前後の処方内容を精査
研究グループは、2011~13年の米国退役軍人ヘルスシステムのデータを用いて、非心臓系で入院した高血圧を有する65歳以上の高齢患者のうち、どれくらいが退院時に降圧治療が強化されていたか、またそれらの強化に関する妥当性のマーカーを特定するため、後ろ向きコホート研究にて調べた。
主要評価項目は降圧治療の強化で、入院前の使用薬物と比べて、退院時に降圧薬の種類が増えていた、また増量となっていた場合と定義した。
14%が強化、ベネフィットの有無は検討されていない?
対象被験者は1万4,915例(年齢中央値76歳[範囲:69~84歳])。そのうち9,636例(65%)が、入院前の外来血圧は良好にコントロールされていた。
全体で2,074例(14%)が、退院時に降圧治療が強化されていた。そのうち半数以上(1,082例)は、入院前の血圧コントロールが良好だった患者であった。
潜在的交絡因子補正後、入院時血圧が上昇していた患者において、退院時の降圧レジメンが強化となる関連性が強く認められた。
入院前の外来血圧コントロールが良好であった患者で、退院時に降圧レジメンが強化されていたのは、入院時に血圧上昇が認められなかった患者8%(95%信頼区間[CI]:7~9)、中程度に上昇が認められた患者24%(95%CI:21~26)、高度に上昇が認められた患者40%(34~46)であった。
タイトな血圧コントロールから得られるベネフィットが少ないと思われる(余命が限られている、認知症、転移を有するがん)患者と、ベネフィットが大きいと思われる(心筋梗塞、脳血管疾患、腎疾患の既往がある)患者において、強化率に差は認められなかった。
(ケアネット)