合成カンナビノイド関連凝固障害が米国で集団発生/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/10

 

 2018年3~4月に、米国イリノイ州で合成カンナビノイドの使用に関連する凝固障害の患者が集団発生した。予備検査で抗凝固薬の混入の可能性が示されたため、確認検査を行い、患者データを再検討したところ、数種のスーパーワルファリンの混入が確かめられた。多くの患者は、ビタミンK1補充療法で症状が抑制されたが、合成カンナビノイド化合物の詳細は判明していないという。米国・University of Illinois College of Medicine at PeoriaのAmar H Kelkar氏らが、NEJM誌2018年9月27日号で報告した。

45件の入院中に34例が合成カンナビノイド関連凝固障害と判定

 2018年3~4月に、150例以上の患者が、凝固障害および出血性素因でイリノイ州の病院を受診した。地域の医師と公衆衛生機関は、凝固障害と合成カンナビノイドの使用との関連を確認した。患者の血清と薬剤のサンプルの予備検査では、抗凝固薬brodifacoumの混入の可能性が示唆された。

 そこで、研究チームは、2018年3月28日~4月21日にイリノイ州ピオリアのSaint Francis医療センターに入院した患者について、医師から報告されたデータを再検討した。ケースシリーズには、合成カンナビノイド関連凝固障害の診断に用いられる判定基準を満たした成人患者を含めた。確認として行われた抗凝固薬中毒の検査は、担当医の判断で指示された。

 45件の入院中に、34例が合成カンナビノイド関連凝固障害と判定された。年齢中央値は37歳(IQR:27~46歳)、24例(71%)が男性で、32例(94%)が白人であった。


合成カンナビノイドへのスーパーワルファリンの混入により臨床的に重大な凝固障害の可能性

 受診時に最も頻度の高かった出血症状は肉眼的血尿(19例、56%)であり、非出血症状では腹痛(16例、47%)の頻度が高かった。合成カンナビノイドの使用頻度は、毎日(16例、47%)から初めて(4例、12%)まで、大きなばらつきが認められた。集団発生に関連した合成カンナビノイドの詳細は明らかではないが、いくつかの市販品が報告されている。

 重度の腹痛または側腹部痛がみられる患者の出血状況を評価するために、画像検査が行われた。最も多い異常所見は、CTが施行された23例中12例にみられた腎臓の異常であった(腎周囲線状陰影[perinephric stranding]、充血、びまん性肥厚など)。

 抗凝固薬の確認検査は34例中15例で行われ、15例でスーパーワルファリン中毒が確認された。brodifacoumが15例(100%)、difenacoumが5例(33%)、bromadioloneが2例(13%)、ワルファリンが1例(7%)で陽性であった。

 ビタミンK1(フィトナジオン)が、34例全例に経口投与された。23例(68%)には静注投与も行われた。赤血球輸血が5例(15%)に、新鮮凍結血漿輸注が19例(56%)に施行され、4因子含有プロトロンビン複合体濃縮製剤が1例に使用された。治療により、入院中に死亡した1例を除き、出血は止まった。

 この死亡例(37歳、女性)は、特発性頭蓋内出血の合併症で死亡した。集団発生中に全州で4例が死亡したが、死亡と関連した出血症状が認められたのは、本症例のみであった。この症例は、合成カンナビノイドとアンフェタミンを使用しており、受診時に頭部外傷は確認されておらず、凝固障害の既往歴や家族歴がなく、抗凝固薬は処方されていないことが確認された。

 著者は、「これらのデータは、合成カンナビノイドへのスーパーワルファリンの混入は、臨床的に重大な凝固障害を引き起こす可能性があることを示すもの」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事