1型DM、ハイブリッド人工膵臓vs.SAP療法/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/18

 

 食事時のインスリンボーラス注入の必要性を除けば昼夜にわたり自動でインスリンを注入するハイブリッド・クローズドループ型インスリン注入システム(以下、ハイブリッド人工膵臓)は、既存のセンサー増強型インスリンポンプ(SAP)療法と比較して、6歳以上の幅広い年齢層にわたる1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善し、低血糖リスクを低減することが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学代謝科学研究所のMartin Tauschmann氏らによる、国際多施設共同の非盲検無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年10月1日号で発表された。

自由生活下で12週間介入、標的血糖範囲内の時間割合を評価
 試験は、英国4病院と米国2施設の糖尿病外来クリニックで、インスリンポンプ療法を受けたが血糖コントロール不良(糖化ヘモグロビン[HbA1c]:7.5~10.0%)の6歳以上の1型糖尿病患者を集めて行われた。

 被験者は無作為に2群に分けられ、1群はハイブリッド人工膵臓療法を、もう1群はSAP療法を、いずれも12週間にわたり自由生活下で受けた。なお、介入期間前に4週間の導入期間が設けられ、試験インスリンポンプと連続血糖モニタリングのトレーニングが行われた。

 適格患者の無作為化は、中央の無作為化ソフトウェアを用いて実行されたが、両群とも割り付け治療の盲検化はされなかった。無作為化では、HbA1c低値(<8.5%)と高値(≧8.5%)の層別化も行われた。

 主要評価項目は、無作為化後12週時点の標的血糖範囲内(3.9~10.0mmol/L)だった時間割合。主要評価項目と安全性評価項目の解析は、全無作為化患者を対象に行われた。

ハイブリッド人工膵臓群65%、SAP療法群54%で有意差
 2016年5月12日~2017年11月17日に114例がスクリーニングを受け、適格患者86例が、ハイブリッド人工膵臓療法(46例)またはSAP療法(40例、対照群)を受けるよう無作為に割り付けられた。被験者のうち22歳以上が44例、13~21歳が19例、6~12歳が23例であった。

 標的血糖範囲内時間割合は、ハイブリッド人工膵臓群(65%、SD8)が、対照群(54%、SD9)と比べて有意に高率であった(ベースラインから12週時点までの変化の平均差:10.8ポイント、95%信頼区間[CI]:8.2~13.5、p<0.0001)。

 HbA1cは、ハイブリッド人工膵臓群がスクリーニング時8.3%(SD 0.6)から、4週間の導入期間後は8.0%(0.6)、12週間の介入期間後は7.4%(0.6)に低下した。対照群は、8.2%(0.5)から7.8%(0.6)、7.7%(0.5)への低下で、HbA1cの低下は、ハイブリッド人工膵臓群が対照群と比べて有意に大きかった(変化の平均差:0.36%、95%CI:0.19~0.53、p<0.0001)。

 血糖値が3.9mmol/L以下で推移した時間(変化の平均差:-0.83ポイント、95%CI:-1.40~-0.16、p=0.0013)、10.0mmol/L以上で推移した時間(同:-10.3ポイント、-13.2~-7.5、p<0.0001)は、いずれもハイブリッド人工膵臓群が対照群よりも有意に短時間であった。

 センサー測定血糖値の変異係数については、介入間で有意差は認められなかった(変化の平均差:-0.4%、95%CI:-1.4~0.7、p=0.50)。同様に、投与されたインスリン1日総量(変化の平均差:0.031U/kg/日、95%CI:-0.005~0.067、p=0.09)と、体重(同:0.68kg、-0.34~1.69、p=0.19)についても両群間で有意な差はなかった。

 重症低血糖症の発生はなかった。ハイブリッド人工膵臓群1例で、注入セットの不具合による糖尿病ケトアシドーシスが報告。また、重症高血糖症が両群2例ずつで、そのほかハイブリッド人工膵臓群13件、対照群3件の有害事象が報告された。

(ケアネット)