SGLT2阻害薬は、アテローム動脈硬化性心血管疾患や心不全の既往にかかわらず、心不全による入院や腎疾患進行リスクを低減するベネフィットがあることが示された。主要有害心血管イベントリスクについては、ベースライン時にアテローム動脈硬化性心血管疾患が認められた場合に限り、低減効果が認められた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のThomas A. Zelniker氏らが、システマティックレビューとメタ解析を行い明らかにし、Lancet誌オンライン版2018年11月9日号で発表した。SGLT2阻害薬の心血管および腎アウトカムへの特異的効果の程度や、不均一性がベースライン特性に基づくものかどうかは明らかになっていなかった。
SGLT2阻害薬の効果をアテローム動脈硬化性心血管疾患の有無などで階層化
研究グループは、PubMedやEmbaseで2018年9月24日までに発表された、2型糖尿病患者を対象としたSGLT2阻害薬に関する無作為化比較試験を検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。データ検索と抽出には標準化されたデータ形式を使用し、矛盾点はコンセンサスで解決した。
有効性アウトカムは、主要有害心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中・心血管死)、心血管死・心不全による入院の複合、および腎疾患の進行(eGFR低下、ESRD、腎機能廃絶などを含む標準化複合腎アウトカム)だった。
解析対象とした試験をプールし、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し、有効性アウトカムについては、ベースライン時のアテローム動脈硬化性心血管疾患や心不全の有無、腎機能の程度により層別化した。
SGLT2阻害薬は重症腎疾患の人ほど、心不全入院リスクの低減効果が大
解析の対象としたのは3試験で、被験者総数は3万4,322例、うちアテローム動脈硬化性心血管疾患が認められたのは60.2%だった。主要有害心血管イベントは3,342件、心血管死または心不全による入院は2,028件、腎疾患の進行は766件発生した。
メタ解析の結果、SGLT2阻害薬は主要有害心血管イベントを11%抑制したことが認められた(HR:0.89、95%CI:0.83~0.96、p=0.0014)。ただし、この抑制効果はベースライン時にアテローム動脈硬化性心血管疾患の認められた人に限られ(HR:0.86、95%CI:0.80~0.93)、同疾患のなかった人では抑制効果はみられなかった(同:1.00、0.87~1.16、交互作用のp=0.0501)。
一方でSGLT2阻害薬は、心血管死または心不全による入院リスクを23%減少した。同効果はベースライン時のアテローム動脈硬化性心血管疾患や、心不全の有無にかかわらず認められた(HR:0.77、95%CI:0.71~0.84、p<0.0001)。また、SGLT2阻害薬は、腎疾患の進行リスクを45%減少し、同効果もベースライン時のアテローム動脈硬化性心血管疾患の有無にかかわらず認められた。
SGLT2阻害薬の効果の程度は、ベースライン時の腎機能によって異なり、より重症の腎疾患の人ほど、心不全による入院リスクの低減効果が大きく(交互作用のp=0.0073)、腎疾患進行リスクの低減効果は小さかった(交互作用のp=0.0258)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)