英国・オックスフォード大学のJoanna C. Crocker氏らは、臨床試験の登録率や維持率への患者・市民参画(patient and public involvement:PPI)の影響、ならびにその影響が患者・市民参画の状況(対象患者集団、募集要件、臨床試験の介入/治療など)や特性(活性度、参画モデルなど)でどのように変化するかを調査した。システマティックレビューとメタ解析による検討の結果、とくに実際に臨床試験に参加した経験のある人が患者・市民参画に含まれている場合に、臨床試験の患者登録が改善する傾向が認められ、臨床試験における患者・市民参画の影響は大きいことが示された。著者は、「患者・市民参画に関しては、個々の状況でどのタイプが最も機能するか、費用対効果、試験計画の初期段階での影響、および維持に関する影響について評価するさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2018年11月28日号掲載の報告。
患者・市民参画の有無で臨床研究への登録率や維持率をメタ解析
研究グループは、10の電子データベース(Medline、INVOLVE Evidence Library、clinical trial registriesなど)を検索し、臨床試験への登録率や維持率に対する患者・市民参画の影響を、患者・市民参画なしまたは患者・市民参画以外の介入と比較し定量的に評価した実証研究および観察研究を特定した。患者・市民参画には、患者・市民参画と切り離せないそれ以外の要素(他の利害関係者の関与など)が加わったものも含めた。
2人の独立した研究者が、登録率および維持率、ならびに患者・市民参画の状況や特性に関するデータを抽出し、バイアスリスクを評価した。ランダム効果メタ解析により、臨床試験における登録と維持に対する患者・市民参画の平均的な影響を算出。主要解析には無作為化試験のみを組み込み、副次解析として非無作為化試験を組み込んだ解析、いくつかの探索的サブグループ解析および感度解析も行った。
患者・市民参画により登録率は1.16倍
26件の研究がレビューに組み込まれた(登録に関するメタ解析19件、維持に関するメタ解析5件)。臨床試験への患者・市民参画には、関与の程度、関与する人の数やタイプ、臨床試験における一連の過程のどの段階で関与するかなど、さまざまな違いが確認された。
登録に関しては、主要解析では、患者・市民参画により被験者登録の可能性が若干ではあるものの有意に増加することが示された(オッズ比[OR]:1.16、95%信頼区間[CI]および予測区間[prediction interval]:1.01~1.34)。なお、この結果には患者・市民参画ではない介入要素が影響を与えた可能性があった。また、探索的サブグループ解析では、臨床試験に実際に参加した経験のある人が関与することが、登録の改善と有意に関連した(OR:3.14 vs.1.07、p=0.02)。
一方、維持に関しては、適格試験が少なく結論は得られなかった(主要解析のOR:1.16、95%信頼区間:0.33~4.14)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)