C型肝炎撲滅、2030年の世界目標に向けた介入の有効性/Lancet

直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting antiviral:DAA)の開発がもたらしたC型肝炎治療の大変革は、公衆衛生上の脅威としてのこの疾患の世界的な根絶に関して、国際的な関心を生み出した。これを受け2017年、世界保健機関(WHO)は、2030年までに根絶との目標を打ち出した。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAlastair Heffernan氏らは、WHOのC型肝炎ウイルス(HCV)根絶目標について現状の達成状況を調査した。Lancet誌オンライン版2019年1月28日号掲載の報告。
6つのシナリオに基づく介入拡大の世界的な影響を評価
研究グループは、世界的なHCV蔓延に及ぼす公衆衛生的介入の影響を評価し、WHOの根絶目標の条件を満たしているかを検証する目的で、数学的モデルを用いた検討を行った(Wellcome Trustの助成による)。世界190ヵ国におけるHCV蔓延の動的伝播モデルを開発した。モデルには、人口統計学的要因、注射薬物使用者(PWID)、現行の治療・予防計画の適用範囲、疾病の自然史、HCV有病率、HCVに起因する死亡のデータが組み込まれた。
HCV感染の伝播リスクを低減し、治療機会を改善し、スクリーニングを受ける機会を増やす介入拡大が、世界に及ぼす影響を推定するために、以下の6つのシナリオに基づいて評価を行った。
(1)現状維持:既存の診断・治療レベルに変化がない、(2)介入1:血液安全性と感染管理の推進、(3)介入2:PWIDの健康被害の削減(harm reduction)、(4)介入3:診断時のDAA提供、(5)介入4:診断数を増やすためのアウトリーチ・スクリーニングの実施、(6)DAA非導入:治療をペグインターフェロンと経口リバビリンに限定(DAA使用の影響の調査のため)。
HCV感染削減目標、死亡削減目標の達成は2032年か
PWIDを除く人口における伝播リスクを80%削減し、健康被害削減サービスの適用範囲をPWIDの40%に拡大する介入により、2030年までに、1,410万件(95%確信区間[CrI]:1,300万~1,520万)の新たな感染が防止される可能性が示された。また、すべての国で診断時にDAAを提供すると、肝硬変および肝がんによる64万件(95%CrI:62万~67万)の死亡が予防可能であることが示唆された。
ベースライン(2015年)と比較して、予防、スクリーニング、治療介入から成る包括的な対策は、1,510万件(95%CrI:1,380万~1,610万)の新たな感染と、150万件(140万~160万)の肝硬変および肝がんによる死亡を防止し、これにより感染率が81%(78~82)抑制され、死亡率は61%(60~62)低下すると推定された。
これは、WHOのHCV感染削減目標の80%に相当するが、死亡削減目標の65%には達しておらず、目標達成は2032年となる可能性が示された。
世界的な疾病負荷の低減は、予防介入の成功、アウトリーチ・スクリーニングの実践とともに、中国、インド、パキスタンなどの主要な高負荷国における進展に依存することが明らかとなった。
著者は、「HCVの疾病負担の削減には、すべての国において、併用治療とともに、血液安全性と感染管理の推進、PWIDの健康被害削減サービスの拡大と創設、大規模なHCVスクリーニングのさらなる改善が必要である」としている。
(医学ライター 菅野 守)
[ 最新ニュース ]

価値ある研究だが、国による医療事情の違いへの考慮が必要(解説:野間重孝氏)(2025/02/24)

統合失調症に対するアリピプラゾール併用による糖脂質代謝への影響〜メタ解析(2025/02/24)

イサツキシマブ、未治療の多発性骨髄腫に適応追加/サノフィ(2025/02/24)

フロスの使用に脳梗塞の予防効果?(2025/02/24)

重度の感染症による入院歴は心不全リスクを高める(2025/02/24)

冷水浸漬はある程度の効果をもたらす可能性あり(2025/02/24)

アスピリンはPI3K経路に変異のある大腸がんの再発リスクを低下させる/ASCO-GI(2025/02/24)

日本人の食事関連温室効果ガス排出量と死亡リスクにU字型の関連(2025/02/24)
[ あわせて読みたい ]
今こそ風邪診療を見直す時【Dr.倉原の“俺の本棚”】第14回(2019/02/12)
Dr.長尾の胸部X線クイズ 上級編 (2019/01/15)
全医師必携【Dr.倉原の“俺の本棚”】第13回(2019/01/11)
Dr.須藤のやり直し酸塩基平衡 (2018/12/15)
僧侶の医師【Dr.倉原の“俺の本棚”】第12回(2018/12/11)
医師が選んだ"2018年の10大ニュース"! 【CareNet.com会員アンケート結果発表】(2018/11/29)
慢性便秘症特集まとめインデックス(2018/12/01)
肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射 (2018/11/15)
Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(上下巻2枚組)(2018/10/15)