omadacyclineは、1日1回の静脈内または経口投与が可能な新規アミノメチルサイクリン系抗菌薬。ウクライナ・City Clinical Hospital #6, ZaporizhzhiaのRoman Stets氏らOPTIC試験の研究グループは、本薬が市中細菌性肺炎の入院患者(ICUを除く)へのempirical monotherapyにおいて、モキシフロキサシンに対し非劣性であることを示し、NEJM誌2019年2月7日号で報告した。omadacyclineは、肺組織で高濃度に達し、市中細菌性肺炎を引き起こす一般的な病原菌に対し活性を発揮するという。
早期臨床効果を評価する無作為化非劣性試験
本研究は、欧州、北米、南米、中東、アフリカ、アジアの86施設が参加し、2015~17年の期間に実施された、第III相二重盲検ダブルダミー無作為化非劣性試験である(Paratek Pharmaceuticalsの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、4つの症状(咳嗽、膿性痰産生、呼吸困難、胸膜痛)のうち3つ以上がみられ、2つ以上のバイタルサインの異常、1つ以上の市中細菌性肺炎に関連する臨床徴候または検査所見があり、画像所見で肺炎が確認され、Pneumonia Severity Index(PSI、クラスI~V、クラスが高いほど死亡リスクが高い)のリスクがクラスII(割り付け患者の15%以下に制限)、III、IVの患者であった。
被験者は、omadacycline群(100mgを12時間ごとに2回静脈内投与し、以降は100mgを24時間ごとに投与)またはモキシフロキサシン群(400mgを24時間ごとに静脈内投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。3日間静脈内投与を行った後、それぞれomadacycline経口投与(300mgを24時間ごと)およびモキシフロキサシン経口投与(400mgを24時間ごと)への移行を可とした。総投与期間は7~14日であった。
主要エンドポイントは、早期臨床効果(救済抗菌薬治療を受けず、72~120時間の時点で上記の4つの症状のうち2つ以上が改善し、症状が増悪せずに生存していることと定義)とされた。副次エンドポイントは、最終投与から5~10日後の投与終了後評価時の担当医評価による臨床効果(徴候または症状がそれ以上の抗菌薬治療が不要な程度にまで消失または改善することと定義)であった。非劣性マージンは、10ポイントとされた。
主要・副次エンドポイントとも非劣性示す
intention-to-treat(ITT)集団として、omadacycline群に386例(年齢中央値:61歳[範囲19~97]、>65歳:39.4%、男性:53.9%)、モキシフロキサシン群には388例(63歳[19~94]、44.3%、56.4%)が割り付けられた。
ベースライン時に、ITT集団の49.9%で市中肺炎の原因菌が同定された。
M. pneumoniae(33%)の頻度が最も高く、次いで
S. pneumoniae(20%)、
L. pneumophila(19%)、
C. pneumoniae(15%)、
H. influenzae(12%)の順だった。
早期臨床効果の達成率は、omadacycline群が81.1%、モキシフロキサシン群は82.7%と、omadacyclineのモキシフロキサシンに対する非劣性が示された(差:-1.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-7.1~3.8)。また、投与終了後評価で担当医が臨床効果ありと評価した患者の割合は、それぞれ87.6%、85.1%であり、omadacyclineの非劣性が確認された(差:2.5ポイント、95%CI:-2.4~7.4)。
投与開始後に発現した有害事象は、omadacycline群が41.1%、モキシフロキサシン群は48.5%と報告された。治療関連有害事象(治療割り付け情報を知らされていない医師が判定)は、それぞれ10.2%、17.8%に認められた。重篤な有害事象はそれぞれ6.0%、6.7%にみられた。
消化器系の有害事象の頻度が最も高く(それぞれ10.2%、18.0%)、発現率の差が最も大きかったのは下痢(1.0%、8.0%)で、このうちモキシフロキサシン群の8例(2.1%)は
Clostridium difficile感染によるものであった。12例(8例、4例)が試験中に死亡し、すべて65歳以上の患者であった。
著者は、「本試験で得られたomadacyclineの定型および非定型呼吸器病原菌に対する抗菌スペクトルや、他の抗菌薬との交差耐性がないなどの知見は、抗菌薬耐性が増加している時代の市中細菌性肺炎の治療における本薬の潜在的な役割を示唆する」としている。
(医学ライター 菅野 守)