5α還元酵素阻害薬(デュタステリドまたはフィナステリド)の投与を受ける良性前立腺肥大症患者は、タムスロシンの投与を受ける患者と比較して2型糖尿病の新規発症リスクが上昇することが示された。デュタステリドとフィナステリドとの間で有意差はなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLi Wei氏らが、5α還元酵素阻害薬投与による2型糖尿病の新規発症を検証した住民ベースのコホート試験の結果で、「これらの薬剤を開始する男性で、とくに2型糖尿病のリスク因子を有する男性では、モニタリングが必要になるだろう」とまとめている。最近の短期投与試験で、デュタステリドがインスリン抵抗性や脂肪肝を引き起こすことが示され、デュタステリドを日常的に服用している男性は他の治療薬を用いている男性と比較し、2型糖尿病のリスクが増加する可能性が指摘されていた。BMJ誌2019年4月10日号掲載の報告。
デュタステリド群、フィナステリド群、タムスロシン群で2型糖尿病の新規発症率を解析
研究グループは、英国の大規模臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD 2003~14年)と台湾の医療保険請求に基づく研究用データベース(Taiwanese National Health Insurance Research Database:NHIRD 2002~12年)を用いて、前立腺肥大症の薬物療法として5α還元酵素阻害薬の投与を受ける患者における2型糖尿病の新規発症率を調べた。
CPRDでは、デュタステリド群8,231例、フィナステリド群3万774例、タムスロシン群1万6,270例が特定され、傾向スコアマッチング(デュタステリド対フィナステリドまたはタムスロシンを2対1)により規定したコホートは、それぞれ2,090例、3,445例、4,018例であった。NHIRDでは、デュタステリド群1,251例、フィナステリド群4,194例、タムスロシン群8万6,263例が特定され、傾向スコアマッチング後のコホートは、1,251例、2,445例、2,502例であった。
2型糖尿病の発生タイプを、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。
デュタステリド、フィナステリドで2型糖尿病の発症リスクが約30%上昇
CPRDでは、追跡期間中央値5.2年(SD 3.1年)で、2型糖尿病の新規発症は2,081例確認された(デュタステリド群368例、フィナステリド群1,207例、タムスロシン群506例)。1万人年当たりの発症頻度は、デュタステリド群76.2(95%信頼区間[CI]:68.4~84.0)、フィナステリド群76.6(95%CI:72.3~80.9)、タムスロシン群60.3(95%CI:55.1~65.5)であった。タムスロシン群と比較し、デュタステリド群(補正後ハザード比[HR]:1.32、95%CI:1.08~1.61)およびフィナステリド群(1.26、1.10~1.45)は、2型糖尿病リスクの中程度の増大が確認された。
NHIRDの結果も、CPRDの結果と一致していた(タムスロシン群と比較したデュタステリド群の補正後HR:1.34[95%CI:1.17~1.54]、同フィナステリド群の補正後HR:1.49[1.38~1.61])。
傾向スコアマッチング解析でも、同様の結果が示された。
(医学ライター 吉尾 幸恵)