ABO血液型不適合腎移植(ABOi-rTx)は、脱感作プロトコルや最適化に進展がみられるものの、3年以内の死亡率や移植腎の非生着率がABO血液型適合腎移植(ABOc-rTx)を上回ることが、ドイツ・オットー・フォン・ゲーリケ大学マクデブルクのFlorian G. Scurt氏らによるメタ解析で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年4月18日号に掲載された。ABOi-rTxは、提供臓器不足の打開策としてその使用が増加しているが、早期および長期のABOc-rTxに対する非劣性のエビデンスが求められている。
ABOc-rTxを対照とし追跡期間1年以上の観察研究のメタ解析
研究グループは、ABOi-rTxとABOc-rTxのアウトカムを比較した観察研究を系統的にレビューし、メタ解析を行った。2017年12月31日までに発表され、ABOc-rTxを対照として移植術後1年以上のフォローアップが行われ、移植腎および移植を受けた患者の生存に関するデータを含む論文を選出した。死体腎ABOc-rTxは除外した。
主要エンドポイントは、術後1、3、5年および8年以降の全死因死亡、および移植腎の生着率とした。メタ解析では、
I2が0の場合は固定効果モデルを、
I2が0以上の場合は固定効果と変量効果モデルの双方を用いた。
1998年1月~2017年9月に発表された40件(日本の12件を含む)の試験に参加した6万5,063例を解析の対象とした。ABOi-rTx群が7,098例(平均年齢:44.9歳[範囲:34~56])、ABOc-rTx群は5万7,965例(43.1歳[31~55])であった。
長期的な生存、生着には差がない、組み直し腎臓提供の強化を
ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、移植後の1年死亡率(オッズ比[OR]:2.17、95%信頼区間[CI]:1.63~2.90、p<0.0001、
I2=37%)、3年死亡率(1.89、1.46~2.45、p<0.0001、
I2=29%)および5年死亡率(1.47、1.08~2.00、p=0.010、
I2=68%)が有意に高かったが、8年以降の死亡率に有意差は認めなかった(1.18、0.92~4.51、p=0.19、
I2=0%)。
移植腎生着率(death-censored graft survival)については、ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、1年時(OR:2.52、95%CI:1.80~3.54、p<0.0001、
I2=61%)および3年時(1.59、1.15~2.18、p=0.0040、
I2=58%)は有意に低く、5年時(1.31、0.96~179、p=0.09、
I2=75%)および8年以降(1.07、0.64~1.80、p=0.79、
I2=66%)は有意な差がなかった。
移植腎喪失の割合は、5年時および8年以降は両群で同等であった。一方、ABOi-rTx群で敗血症の割合が高かったが、尿路感染症やサイトメガロウイルス感染症には有意な差はなかった。また、ABOi-rTx群は出血や血腫、リンパ嚢腫の頻度が高かった。拒絶反応の割合は、全体、境界領域、T細胞関連型には両群で差はなかったが、急性抗体関連型の拒絶反応はABOi-rTx群で高かった。
リツキシマブベースの脱感作プロトコルは、これを用いた場合および用いなかった場合の死亡率が、初回脱感作プロトコルの有無にかかわらず、1年時(リツキシマブ不使用[OR:2.70、95%CI:1.74~4.18、
I2=27%、p
heterogeneity=0.23]、リツキシマブ使用[1.97、1.14~3.42、
I2=45%、p
heterogeneity=0.02])および3年時(リツキシマブ不使用[2.37、1.04~5.42、
I2=47%、p
heterogeneity=0.11]、リツキシマブ使用[1.77、1.20~2.60、
I2=11%、p
heterogeneity=0.33])ともに、ABOi-rTx群がABOc-rTx群よりも高かった。
出版バイアスは検出されなかった。また、移植後5年までの結果は頑健であったが、それ以降のデータは無効または非結論的だった。
著者は、「これらの知見は、ABO血液型不適合腎移植を進めるのではなく、組み直し腎臓提供(kidney paired donation)を支持するものであり、腎臓交換プログラムのネットワークを拡大し、その活用を強化する行動を求めるものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)