長時間の座位は、多くの疾患や死亡のリスクを増大させる。カナダ・Alberta Health ServicesのLin Yang氏らが、米国における2001~16年の座位行動の傾向を調査した結果、1日に2時間以上のテレビ/ビデオ視聴の割合は高いまま安定しており、余暇におけるコンピュータ使用は全年齢層で増加し、1日の総座位時間は青少年および成人で有意に延長したことが明らかとなった。2018年に発表された「米国人のための身体活動ガイドライン(Physical Activity Guidelines for Americans)第2版」により、座位に伴う健康上のリスクが知られただけでなく、中~高強度の身体活動の増加と座位時間の短縮の双方によって、多くの人々が健康上の利益を得ていることが初めて示されたが、座位時間の定量的な主要ガイドラインは記載されていないという。JAMA誌2019年4月23日号掲載の報告。
経時的な傾向を調査する連続的な横断研究
研究グループは、米国における座位行動のパターンおよびその経時的な傾向を調査し、社会人口統計学的特性や生活様式上の特性との関連を検討する目的で、連続的な横断研究を行った(米国国立がん研究所などの助成による)。
米国の全国健康栄養調査(NHANES)のデータを用い、小児(5~11歳、2001~16年)、青少年(12~19歳、2003~16年)、成人(20歳以上、2003~16年)に分けて解析を行った。
主要アウトカムは、1日2時間以上の座位でのテレビ/ビデオ視聴、1日1時間以上の学校または職場以外でのコンピュータの使用、および総座位時間(12歳以上における1日の座位時間)であった。
2001~16年のNHANESから得た5万1,896人(平均年齢37.2[SE 0.19]歳、2万5,968人[50%]が女性)のデータを解析した。小児が1万359人、青少年が9,639人、成人は3万1,898人だった。
2007~16年に、1日の総座位時間が青少年と成人で約1時間延長
2015~16年度における1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は全年齢層で高く、小児が62%(95%信頼区間[CI]:57~67)、青少年が59%(54~65)、成人が65%(61~69)であり、成人のうち20~64歳が62%(58~66)、65歳以上では84%(81~88)に達した。
2001年から2016年までに、1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は、小児(差:-3.4%、95%CI:-11~4.5、傾向性のp=0.004)では非ヒスパニック系白人を中心に経時的に有意に低下し、青少年(-4.8%、-12~2.3、p=0.60)および20~64歳の成人(-0.7%、-5.6~4.1、p=0.82)では安定していたが、65歳以上の成人(3.5%、-1.2~8.1、p=0.03)では有意に増加した。
1日1時間以上の学校/職場以外でのコンピュータ使用の割合は、全年齢層で経時的に増加した。小児では2001年の43%(95%CI:40~46)から2016年には56%(49~63)へ(差:13%、95%CI:5.6~21、傾向性のp<0.001)、青少年では2003年の53%(47~58)から2016年には57%(53~62)へ(4.8%、-1.8~11、p=0.002)、成人では2003年の29%(27~32)から2016年には50%(48~53)へ(21%、18~25、p<0.001)と、それぞれ有意に増加した。
1日当たりの総座位時間は、青少年では2007年の7.0時間(95%CI:6.7~7.4)から2016年には8.2時間(7.9~8.4)へ(差:1.1、95%CI:0.7~1.5、傾向性のp<0.001)、成人でも5.5時間(5.2~5.7)から6.4時間(6.2~6.6)へ(1.0、0.7~1.3、p<0.001)と、いずれも有意に増加した。
著者は、「注目すべきは、青少年と成人の総座位時間の増加は、テレビ/ビデオ視聴以外の座位行動に起因すると考えられ、これはコンピュータ使用時間の増加によってある程度促進された可能性があることだ」としている。
(医学ライター 菅野 守)