妊娠中に受けた2009年パンデミックH1N1(pH1N1)インフルエンザワクチン接種と、出生児の5歳までの健康アウトカムについて、ほとんど関連性は認められないことが、カナダ・オタワ大学のLaura K. Walsh氏らにより報告された。10万例超の出生児を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果で、若干の関連性として、喘息の増加と消化器感染症の低下が観察されたが、著者は「これらのアウトカムは、さらなる検討で評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。
感染症、喘息、腫瘍、感覚障害、入院などのリスクを検証
研究グループは、カナダ・オンタリオ州の住民ベースの出生レジストリと健康管理データベースを結び付けて、2009年11月~2010年10月の出生児10万4,249例について、母親が妊娠中に受けたpH1N1インフルエンザワクチン接種と、5歳までのアウトカムとの関連を検証した。
主要アウトカムは、免疫関連疾患(感染症、喘息)、免疫に関連しない疾患(腫瘍、感覚障害)、非特異的疾患アウトカム(救急または入院医療サービス利用、小児の複合的な慢性疾患)の割合だった。5歳までの死亡率についても評価を行った。
傾向スコア重み付け法を用いて交絡因子を補正し、ハザード比、罹患率比、リスク比を算出した。
ほとんど関連なし、わずかに喘息リスクが1.05倍、消化器感染症が0.94倍
10万4,249例のうち、子宮内でpH1N1インフルエンザワクチンの曝露を受けたのは3万1,295例(30%)だった。
解析の結果、上気道・下気道感染、中耳炎、感染症、腫瘍、感覚障害、救急または入院医療サービス利用、小児複合慢性疾患、死亡のいずれについても、有意な関連は見つからなかった。
ただしわずかな関連性として、喘息リスクの増加(補正後ハザード比:1.05、95%信頼区間:1.02~1.09)、消化器感染症の低下(補正後罹患率比:0.94、同:0.91~0.98)が認められた。これらの関連性は、受療行動や医療サービスへのアクセスについて潜在的格差を反映して行った感度分析でも、同様に認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)