症候性変形性膝関節症患者では、6もしくは12ヵ月ごとのsprifermin100μgの関節内注射により、2年後の大腿脛骨関節軟骨の厚みがプラセボに比べ統計学的に有意に増加することが、米国・メリーランド大学のMarc C. Hochberg氏らが行ったFORWARD試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年10月8日号に掲載された。spriferminは、組み換え型ヒト線維芽細胞成長因子18であり、関節内に注射する変形性関節症の疾患修飾薬として研究が進められている。変形性膝関節症ラットモデルでは、硝子軟骨を産生する関節軟骨細胞の増殖を誘導し、in vitroおよびex vivoで硝子細胞外基質の合成を促進することが示され、膝関節軟骨の厚さを増加させると報告されている。
用量を決定する5年間のプラセボ対照無作為化第II相試験
本研究は、症候性変形性膝関節症患者におけるspriferminの用量を決定する5年間の二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、10施設の参加のもと、2013年7月~2014年5月の期間に患者登録が行われた(MerckおよびEMD Serono Research Instituteの助成による)。
対象は、年齢40~85歳、X線画像で確定された症候性の変形性膝関節症(内側、外側またはこれら両方のコンパートメント)で、Kellgren-Lawrence分類のGrade2/3、内側の最小関節腔幅2.5mm以上、膝関節痛が6ヵ月以上持続し、スクリーニング前の1ヵ月間の半分以上の日数で鎮痛薬を要する症状が認められた患者であった。
被験者は次の5つの群に無作為に割り付けられた。(1)sprifermin100μgを6ヵ月ごとに投与(110例)、(2)同量を12ヵ月ごとに投与(110例)、(3)30μgを6ヵ月ごとに投与(111例)、(4)同量を12ヵ月ごとに投与(110例)、(5)プラセボを6ヵ月ごとに投与(108例)。各治療サイクルでは、毎週1回、3週間の関節内注射が行われた。試験期間は5年であり、2年と3年時にアウトカムの評価が行われた。
主要エンドポイントは、ベースラインから2年後の定量的MRI測定による大腿脛骨関節軟骨の厚みの変化とした。副次エンドポイントは、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC:患者の主観的な健康関連QOLの評価法、0~10点、点数が高いほど不良)の総スコアのベースラインから2年後までの変化などであった。
WOMAC総スコアに有意な変化はない、臨床的重要性は不明
549例(年齢中央値65.0歳、379例[69.0%]が女性)が登録され、474例(86.3%)が2年間のフォローアップを完遂した。sprifermin群の18.4%(81/441例)およびプラセボ群の25.9%(28/108例)が2年以内に治療を中止し、それぞれ12.2%および19.4%が試験を中止した。Kellgren-Lawrence重症度分類のGrade2が69%であった。
ベースラインから2年後の大腿脛骨関節軟骨の厚みの変化は、プラセボ群(-0.02mm)と比較して、sprifermin100μgの6ヵ月ごと投与群は0.05mm(95%信頼区間[CI]:0.03~0.07)、100μgの12ヵ月ごと投与群は0.04mm(0.02~0.06)増加し、いずれも有意差が認められたが、30μgの6ヵ月ごと投与群は0.02mm(-0.01~0.04)、30μgの12ヵ月ごと投与群は0.01mm(-0.01~0.03)の増加であり、有意差はみられなかった。
ベースラインから2年後のWOMAC総スコアの変化は、プラセボ群に比べて、spriferminの4つの投与群のいずれにおいても、統計学的に有意ではなかった。同様に、WOMACの3つの下位尺度(疼痛、身体機能、こわばり)についても、有意な変化は認めなかった。また、鎮痛薬の使用にも、プラセボ群と4つのsprifermin群の間に有意な差はみられなかった。
頻度の高い治療関連有害事象は、筋骨格系/結合組織疾患(関節痛、背部痛)、感染(上気道感染、鼻咽頭炎)、血管疾患(高血圧)、神経系疾患(頭痛)であり、最も頻度が高かったのは関節痛(プラセボ群:43.0%、100μgの6ヵ月ごと投与群:41.3%、100μgの12ヵ月ごと投与群:45.0%、30μgの6ヵ月ごと投与群:36.0%、30μgの12ヵ月ごと投与群:44.0%)だった。
著者は「100μgの6および12ヵ月投与群は、プラセボ群よりも統計学的に有意に大腿脛骨関節軟骨の厚みを改善したが、その臨床的な重要性や奏効の持続性については不明である」としている。
(医学ライター 菅野 守)