晩期発生の孤立性内側型変形性膝関節症(膝OA)で人工膝関節置換術が適応の患者に対し、人工膝関節部分置換術(partial knee replacement:PKR)と人工膝関節全置換術(total knee replacement:TKR)はともに、長期の臨床的アウトカムは同等であり、再手術や合併症の頻度も同程度であることが示された。英国・Botnar Research CentreのDavid J. Beard氏らによる、528例を対象とした5年間のプラグマティックな多施設共同無作為化比較試験「Total or Partial Knee Arthroplasty Trial(TOPKAT)試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年7月17日号で発表した。費用対効果はPKRがTKRに比べ高いことも示され、著者は「PKRを第1選択と考えるべきであろう」と述べている。PKRとTKRはいずれも晩期発生の孤立性内側型膝OAに適応される治療だが、選択のばらつきが大きく、選択のための確たるエビデンスがほとんど示されていなかった。
5年後のオックスフォード膝スコアと費用対効果を比較
研究グループは、英国27ヵ所の医療機関を通じて、専門的知見かつ平等の観点で選出した孤立性内側型膝OAでPKRが一般に適応となる患者を対象に試験を行った。同グループは被験者を無作為に2群(1 vs.1)に分け、一方にはPKRを、もう一方にはTKRを行った。執刀医は、PKR専門医およびTKR専門医で、被験者は、いずれの手技も受けられるように割り付けられ、専門的観点で割り付けられた手技の実施有無が決められた。
主要エンドポイントは、5年後のオックスフォード膝スコア(Oxford Knee Score:OKS)だった。英国の2017年時点における医療費と、費用対効果についても評価した。
PKRがTKRより手術・フォローアップともに低コスト
2010年1月18日~2013年9月30日に、962例が試験適格の評価を受けた。431例(45%)が除外され(121例[13%]が包含基準を満たさず、310例[32%]は参加を辞退)、528例(55%)が無作為化を受けた。そのうち94%が術後5年の追跡調査を完了した。
術後5年時点のOKSは両群で有意な差はなかった(平均群間差:1.04、95%信頼区間[CI]:-0.42~2.50、p=0.159)。
試験内費用対効果の分析で、PKRがTKRよりも5年の追跡期間中の効果が高く(追加のQALY:0.240、95%CI:0.046~0.434)、医療費は低額だった(-910ポンド、95%CI:-1,503~-317)。分析結果は、PKRがTKRに比べ、わずかだがアウトカムが良好であり、手術コストは低額で、フォローアップにかかる医療費も低額であることを示すものだった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)