軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)で、静脈内または血管内血栓溶解療法を受けなかった患者において、チカグレロル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較し、発症後30日時点の脳卒中/死亡の複合アウトカムの発生が低下した。米国・テキサス大学オースティン校のS. Claiborne Johnston氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「THALES試験」の結果を報告した。先行研究では、チカグレロルはアスピリンと比較して、脳卒中/TIA後の血管イベントまたは死亡の予防という点で良好な結果は示されておらず、脳卒中予防に対するチカグレロル+アスピリン併用療法の有効性は十分検討されていなかった。NEJM誌2020年7月16日号掲載の報告。
虚血性脳卒中/TIA患者約1万1,000例を対象に試験
研究グループは、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)のスコアが5未満(範囲:0~42、スコアが高いほど重症度が高い)の軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中、またはTIA患者で、血栓溶解療法または血栓除去を実施していない1万1,016例を、発症後24時間以内にチカグレロル(180mg負荷投与後に90mgを1日2回)+アスピリン(初回投与300~325mg、その後75~100mg/日)併用群、またはプラセボ+アスピリン群に1対1の割合で無作為に割り付け(チカグレロル併用群5,523例、アスピリン単独群5,493例)、それぞれ30日間投与した。
主要評価項目は30日以内の脳卒中または死亡の複合アウトカム、副次評価項目は30日以内の虚血性脳卒中の初回再発および身体障害で、主要安全性評価項目は重度出血(GUSTO出血基準)とし、intention-to-treat解析を実施した。
チカグレロル併用により、脳卒中または死亡の複合アウトカムのリスクが低下
主要評価項目のイベントは、チカグレロル併用群で303例(5.5%)、アスピリン単独群で362例(6.6%)発生した(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.71~0.96、p=0.02)。虚血性脳卒中は、チカグレロル併用群で276例(5.0%)、アスピリン単独群で345例(6.3%)発生した(HR:0.79、95%CI:0.68~0.93、p=0.004)。障害の発生率については、両群間で有意差は認められなかった。
重度出血は、チカグレロル併用群で28例(0.5%)、アスピリン単独群で7例(0.1%)発生した(p=0.001)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)