初期の心房細動(AF)で心血管症状を呈する患者において、早期リズムコントロール療法は、通常ケアよりも心血管アウトカムのリスクを低下させることが、ドイツ・University Heart and Vascular CenterのPaulus Kirchhof氏らによる検討で示された。AF治療は改善されてはいるが、心血管合併症のリスクは高いままである。一方で、早期リズムコントロール療法が同リスクを低減するかは不明であり、研究グループは、国際共同治験担当医主導の並行群間比較による非盲検割付のアウトカム盲検化評価試験で同療法の検討を行った。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。
通常ケアと比較し、有効性と安全性を評価
研究グループは、初期のAF(診断が試験登録前1年以内)で心血管症状を有する患者を無作為に2群に割り付け、一方には早期リズムコントロール療法を、もう一方には通常ケアを行った。早期リズムコントロール療法群には、無作為化後に抗不整脈薬の投与またはAFアブレーション治療が行われた。通常ケア群には、AF関連症状の管理に対して限定的にリズムコントロール療法が行われた。
有効性の主要アウトカムは、心血管死・脳卒中・心不全または急性冠症候群(ACS)の増悪による入院の複合。副次アウトカムは、年当たりの病院宿泊日数(number of nights spent)とした。
また、安全性の主要アウトカムは、死亡・脳卒中・リズムコントロール療法に関連した重篤な有害事象の複合。副次アウトカムは症状および左室機能などを評価した。
追跡期間中央値5.1年後に試験中止、有効性のハザード比0.79で有意差
135の医療センターで登録された初期のAF患者2,789例(診断後の期間中央値36日)が無作為化を受けた。試験は、患者1人当たりの追跡期間中央値5.1年後に行われた3回目の中間解析で、有効性が確認されたとして中止となった。
主要有効性アウトカムのイベント発生は、早期リズムコントロール療法群249例(3.9/100人年)、通常ケア群316例(5.0/100人年)であった(ハザード比[HR]:0.79、96%信頼区間[CI]:0.66~0.94、p=0.005)。また、平均(±SD)病院宿泊日数は群間で有意差はなかった(5.8±21.9 vs.5.1±15.5日/年、p=0.23)。
主要安全性アウトカムのイベントを有した患者の割合は、群間で有意差はなかった。リズムコントロール療法に関連した重篤な有害事象の発生は、早期リズムコントロール療法群4.9%、通常ケア群1.4%であった。また、2年時点の症状および左室機能についても群間で有意差はなかった。
(ケアネット)