高用量インフルワクチン、高リスクCVDの死亡改善せず/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/22

 

 高リスク心血管疾患患者では、高用量3価不活化インフルエンザワクチンは標準用量4価不活化インフルエンザワクチンと比較して、全死因死亡率や心肺疾患による入院率を低下させないことが、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが行ったINVESTED試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年12月4日号で報告された。インフルエンザは、ワクチン接種への免疫応答が強くない心血管疾患患者の心肺合併症や死亡の割合を一時的に高めるという。高用量のインフルエンザワクチンは、インフルエンザによる疾患のリスクを低減する可能性が示唆されている。

北米157施設が参加した実践的な無作為化実薬対照比較試験

 本研究は、米国とカナダの157施設が参加した実践的な二重盲検無作為化実薬対照比較試験であり、2016年9月21日~2019年1月31日の期間の3回のインフルエンザ流行期に実施された(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。

 対象は、1つ以上のリスク因子(65歳以上、糖尿病、LVEF<40%、BMI≧30、CKDの既往、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患など)を有し、過去12ヵ月間に急性心筋梗塞による入院歴または過去24ヵ月間に心不全による入院歴のある患者であった。

 被験者は、高用量3価または標準用量4価の不活化インフルエンザワクチンを接種する群に無作為に割り付けられ、最大3回の流行期に再接種が可能とされた。

 主要アウトカムは、各流行期における全死因死亡および心肺疾患による入院の複合が発生するまでの期間とした。最終フォローアップ日は2019年7月31日だった。

4つの副次アウトカムにも差はない

 3回の流行期に5,260例(平均年齢:65.5[SD 12.6]歳、男性3,787例[72%]、心不全3,289例[63%]、心筋梗塞1,960例[37%])が無作為化の対象となり、高用量ワクチン群に2,630例、標準用量ワクチン群にも2,630例が割り付けられた。総ワクチン接種回数は7,154回で、5,226例(99.4%)が試験を完了した。

 主要アウトカムは、高用量群では、3,577人流行期当たり884例に975件(心肺疾患が原因の入院883件、全死因死亡92件)発生した(イベント発生率:45件/100人年)。これに対し、標準用量群では、主要アウトカムが3,577人流行期当たり837例に924件(心肺疾患が原因の入院846件、全死因死亡78件)発生した(イベント発生率:42件/100人年)。イベント発生のハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.97~1.17)であり、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.21)。

 個々の流行期(2016~17年:HR:1.08[95%CI:0.80~1.45、p=0.61]、2017~18年:1.12[0.98~1.29、p=0.10]、2018~19年:1.01[0.89~1.15、p=0.86])においても、両群間に有意差はみられなかった。また、4つの副次アウトカム(個々の流行期の心血管死および入院、全死因死亡、全流行期の心肺疾患による入院および全死因死亡、全流行期の心肺疾患による入院および全死因死亡の初回発生)にも有意な差はなかった。

 ワクチン関連有害事象は、高用量群が1,449例(40.5%)、標準用量群は1,229例(34.4%)で発現した。最も頻度の高い有害事象は、注射部位の疼痛(高用量群26.1% vs.標準用量群19.1%)、筋肉痛(14.0% vs.11.8%)などであり、高用量群で高い傾向がみられた。重度の有害事象は、高用量群が55例(2.1%)、標準用量群は44例(1.7%)で、重篤な有害事象はそれぞれ2例および4例で認められた。

 著者は、「この患者集団では、引き続きインフルエンザワクチン接種が強く推奨される」としている。

(医学ライター 菅野 守)