飼い犬が糖尿病の飼い主は、飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比べて、2型糖尿病の発症リスクが有意に高い(約1.3倍)ことがデータで明らかにされた。逆に飼い主が2型糖尿病の際の飼い犬の糖尿病発症リスクの増大については、有意な関連性は認められず、また、飼い猫と飼い主には、そのような関連性は認められなかったという。スウェーデン・ウプサラ大学のRachel Ann Delicano氏らが、飼い犬と飼い主のペア約21万組、飼い猫と飼い主のペア約12万組について行った縦断研究の結果を報告した。飼い犬と飼い主は、身体活動量など特定の健康行動を共有する場合がある。以前に行われた横断研究で、飼い犬と飼い主における肥満について関連性があることが示されていたが、飼い犬と飼い主および飼い猫と飼い主で糖尿病リスクを共有するのか調べた研究はこれまでなかった。BMJ誌2020年12月10日号クリスマス特集号の「THE CITADEL」より。
ペット保険の情報、患者レジストリなどを基に調査
研究グループは、スウェーデンで暮らす犬の40%、猫の23%をカバーするペット保険の情報と、保健福祉庁などのレジストリを基に、2004~06年の飼い犬と飼い主のペア20万8,980組、飼い猫と飼い主のペア12万3,566組を対象に登録ベースの縦断研究を行った。
飼い主の2型糖尿病の有無については、全国患者レジストリやスウェーデン処方薬レジストリなどを、また、犬・猫についてはペット保険データを基に、2007~12年まで追跡した。
多状態モデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出評価。個人や社会経済的状況など考えられる共有リスク因子で補正を行った。
飼い“猫”と飼い主では、関係性はみられず
追跡期間中の2型糖尿病罹患率は、犬の飼い主が7.7/1,000人年だったのに対し、猫の飼い主では7.9/1,000人年だった。ペットの糖尿病罹患率は、犬が1.3/1,000匹年、猫が2.2/1,000匹年だった。
飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比較した、飼い犬が糖尿病の飼い主の2型糖尿病発症に関する補正前HRは、1.38(95%CI:1.10~1.74)、多変量補整後HRは、1.32(1.04~1.68)だった。
反対に、飼い主が2型糖尿病ではない飼い犬と比較した、飼い主が2型糖尿病の飼い犬の糖尿病発症に関する補整前HRは、1.28(95%CI:1.01~1.63)だった。しかしながら同HRは、飼い主の年齢で補整後は減弱(CI値はnull値を交叉)した(補整後HR:1.11、95%CI:0.87~1.42)。
なお、猫の飼い主の2型糖尿病と飼い猫の糖尿病については、有意な関連は認められなかった。
結果を踏まえて著者は、「糖尿病の犬は、糖尿病を引き起こす健康行動や環境曝露を共有するための番犬(sentinel)としての務めを果たす可能性がある」とまとめている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)