アメリカでは結核対策の強化によって感染者が減少している。しかし、外国生まれの米国居住者の患者数は、2006年における全米の患者数の57%を占めていた。現行の対策では、入国者における高い結核感染率と潜在的な結核感染症への対処が不十分だとして、米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らが、入国者集団の感染状況およびスクリーニング法を評価。JAMA誌2008年7月23日号に結果が掲載された。
2001~2006年の入国者の感染状況を調査
2001~2006年の間に結核と診断された、米国入国者の記述疫学的な分析によって、入国者集団における結核感染率と薬剤耐性菌リスクを評価し、入国者が出身国で受けるスクリーニング法に培養法を加えた場合の影響を検証した。
主要評価項目は、入国後の時間、出身国、入国時の年齢によって階層化した結核感染率と、抗結核薬耐性パターン、入国後3ヵ月以内に結核と診断されたケースの特徴とした。
アフリカ南部と東南アジア出身者が高リスク
期間中入国者のうち4万6,970例が結核と診断された。このうち1万2,928例(28%)は入国後2年以内だった。入国後の時間が経過するほど結核感染率は低下するものの、入国後20年以上の集団でさえ、米国生まれの人より感染率は高いことが判明した。
サハラ以南のアフリカと東南アジア出身者は入国者全体の22%だが、結核患者数の比率ではこれら出身者で53%を占めていた。最近のベトナムからの入国者の20%が、ペルーからの入国者の18%が、結核治療薬イソニアジド(商品名:イスコチン、ネオイスコチン、ヒドラ錠)に対する耐性が高かった。平均すると1年に250人は、米国入国後3ヵ月以内に、塗抹検査陰性、培養検査陽性で結核と診断され、このうち46%がフィリピンとベトナムからの入国者だった。
Cain氏は、「サハラ以南のアフリカと東南アジア諸国からの入国者に、潜在的結核感染者が多く、治療することになる比率が特に高い」と報告している。
(朝田哲明:医療ライター)