漿液性卵巣がん、Wee1阻害薬追加でPFS延長/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/08

 

 high-grade漿液性卵巣がんの治療において、Wee1阻害薬adavosertib(AZD1775、MK1775)とゲムシタビンの併用はゲムシタビン単独と比較して、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長させることが、カナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのStephanie Lheureux氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月23日号で報告された。Wee1キナーゼは、細胞周期のG2/M期チェックポイントの重要な制御因子で、G2/M期チェックポイントは損傷したDNAの有糸分裂への進入を防止する。high-grade漿液性卵巣がんは、TP53遺伝子変異の発現頻度が高く複製ストレスが高度ながんであり、TP53遺伝子変異はS期およびG2期チェックポイントへの依存性を増大させる。adavosertibは、Wee1を阻害することでG2期チェックポイント脱出を誘導することから、TP53遺伝子変異を有する腫瘍に有効と考えられている。adavosertib+ゲムシタビン療法は、前臨床試験で相乗効果を示し、早期の臨床試験では有望な抗腫瘍活性が確認されている。

北米の11施設が参加したプラセボ対照無作為化第II相試験

 本研究は、卵巣がん患者におけるadavosertib+ゲムシタビンの有効性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、2014年9月~2018年5月の期間に、米国とカナダの11施設で患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]がん治療評価プログラム、AstraZenecaなどの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤抵抗性またはプラチナ製剤難治性の再発high-grade漿液性卵巣がんで、全身状態(ECOG PS)が0~2、3ヵ月以上の生存が期待され、臓器および骨髄の機能が正常な女性であった。非無作為化の探索的コホートとして、high-grade漿液性以外の卵巣がん女性も登録された。

 被験者は、28日を1サイクルとして、ゲムシタビン(1,000mg/m2、1、8、15日目、静脈内投与)とともに、adavosertib(175mg、1、2、8、9、15、16日目、経口投与)またはプラセボを投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで投与が継続された。

 主要エンドポイントはPFS期間とされた。安全性と有効性の解析は、少なくとも1回の治療を受けたすべての患者で行われた。

OS、奏効率も有意に改善、Grade3以上の血液毒性が多い

 high-grade漿液性卵巣がん女性94例(adavosertib群61例、プラセボ群33例)と、非無作為化コホートとして非high-grade漿液性卵巣がん女性25例(adavosertib+ゲムシタビンを投与)が登録された。非high-grade漿液性卵巣がんには、low-grade漿液性がん、類内膜がん、明細胞がんが含まれた。全体(119例)の年齢中央値は62歳(IQR:54~67)だった。

 無作為化集団のPFS期間中央値は、adavosertib群が4.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.6~6.4)と、プラセボ群の3.0ヵ月(1.8~3.8)に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.35~0.90、log-rank検定のp=0.015)。

 データカットオフ時の全生存(OS)期間中央値は、adavosertib群が11.4ヵ月、プラセボ群は7.2ヵ月であり、有意な差が認められた(HR:0.56、95%CI:0.35~0.91、log-rank検定のp=0.017)。

 完全奏効(CR)を達成した患者はなく、部分奏効(PR)がadavosertib群23%、プラセボ群6%で得られた(p=0.038)。adavosertib群の奏効期間中央値は3.7ヵ月だった。

 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は血液毒性であった(好中球減少:adavosertib群62%、プラセボ群30%、血小板減少:31%、6%)。治療関連死は認められず、試験期間中に2例が死亡した(adavosertib群1例[敗血症]、プラセボ群1例[病勢進行])。

 非high-grade漿液性卵巣がん女性の探索的解析では、4例(16%)でPR、9例(36%)で病勢安定(SD)が得られた。Grade3以上の好中球減少が72%、血小板減少が36%で発現した。

 著者は、「この治療アプローチは、複製ストレスが高度な他の腫瘍に適用できる可能性があり、より大規模な検証的試験が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)